TOEIC S&W

はじめてのTOEIC Speaking & Writing

ひとことで言うと、ぐったり疲れた。
以下、今回の経験から得られた教訓と、考えたこと。
※試験の内容については公表を禁じられているので、私の体験談のみです。

そもそものきっかけは、大きく分けて2つ。
ひとつは、大学入試改革。
テレビの普通のニュースでも取り上げられるくらいなので、日本に住んでいる人たちは、もう英語教育関係者じゃなくても“4技能”のことを知っている。
ところが、“4技能”になる経緯や「なぜ」については情報がたくさんある(参照1 参照2)一方で、「何を」「どうやって」評価するのかはよくわからない。

もうひとつは、日本人向けの発音やスピーキング指導。
この方面には、音声学をかじったなにやら感じのよくない人や、西海岸の社長みたいなスピーチを布教する人などが目立つ。
ま、お商売は自由だし、学習者のニーズがそこにあるならしょうがないとは思うけど、もう少し教育的になんとかならないものか。

そこで、“スピーキング”と言われているものの中身を知るべく、手始めに TOEIC Speaking & Writing の攻略本を買ってみた。
でもどうにも読み進めないので、とりあえず試験を受けてみることにした。

が、しかし。
いやはや。
ボロボロだったよ。

まず最初の教訓は、「ぶっつけ本番で臨んではいけない」。
試験の構成や各パートの制限時間はもちろん、当日の流れをあらかじめ頭に入れて、最初の説明画面なんて読まなくてもとっとと進めるようにしておくこと。
そのためには、攻略本を読んで演習をやる、サンプル試験(参照)を受けるなどの準備が必須。
たとえば私は説明画面の表示時間いっぱいを使ってリスニング試験の構成をメモしていたのだが、それをやっちゃうと後述のとおり後ろの受験者に追いつかれて困ることになる。
また、各問題の制限時間と、それが画面上のどこに表示されるかを知っておかないと、時間切れになりやすい。

教訓その2は、「場に呑まれてはいけない」。
テストセンターに慣れていないと、それだけで緊張すると思う。
私はTOEFL(日本)とGRE(アメリカ)の受験歴があるので、テストセンターの雰囲気は知っていた。
だから会場については大丈夫だったけど、今回は周りの人の声やタイプ音が気になってしまった。
2015年のTOEIC L&R 以来、試験の類を受けていなかったので、受験モードを忘れていたのもいけなかった。
最初はのんびりしすぎ、途中から緊張してきて、その後に気を緩め、最後にまた慌てることになった。

受験者は、日頃から英語を使い慣れている人たちが多そうだった。
いわゆるカタカナ英語発音は聞こえてこないし、流暢さもある。
日本では「英語ペラペラ」に属する人など、ある程度英語に自信がある人が受けているのかも。

第1問の読み上げ問題で、背中合わせに座っている人が私と同時に、同じ問題に当たっていることがわかった。
配置から考えると、私より4-5人あとに受付をした人だと思う。
彼女はこの試験に慣れているようで、だから説明画面を飛ばして私に追いついてしまったのだろうけど、いかにも高得点狙いのアクセントや切れ目をはっきりさせた、堂々とした読みっぷりだった。
大声で話すのは推奨されていないはずだが、まぁつい大きくなるのは仕方がない。
ヘッドホンをしていても彼女の声が耳に入り、自分の読みが聞こえないので、間をあけるなどして彼女に先に行ってもらうようにした。

重なっちゃったのは私のせいだし、やりにくいのはお互いさま。
「同じ問題だ」とわかったところで、申し訳ないけどどうしようもない。
制限時間も同じだから、出だしが同時なら最後まで同時。
出題はアダプティブじゃないので、問題も最後まで同じだった。

読み上げのパートでは時間が余った。
で、次の写真描写問題でのんびりしゃべっていたら急に終了。
そこでやっと制限時間を意識しながら回答する必要があることに気づいた。
カウントダウンタイマーは画面の右上にあった。
とほほ。

途中、他の受験者が係員に日本語で質問しているのが聞こえてきた。
こういうときでも、やっぱり母語はシャットアウトできないんだよなぁと感心する。
外国の観光地で、他に雑音があろうとも、どんなに遠くにいようとも、日本語はばっちり聞こえてくるもんね。

ライティング試験に移ってヘッドホンを外すと、今度はあっちもこっちもキーボードを強く叩く音がすごい。
後から思うと、私より先にライティングに着手している人もいるんだから気にしなくていいんだけど、現場ではやっぱり焦るし、なんかちょっと怖い。
ただ、ライティングの第1問は時間がたっぷり余ったので、そこでようやく落ち着いた。
以降はわりと順調だったけど、最後の最後、読み直し中に「a minimum of 300 words」という語数が目に入り、「あ、ちょっと足りてない」と気づいて書き足しはじめたところで時間切れ。
あーあ。

そして、ぐったり疲れた帰り道に考えた。
あれで何が測れるのかな?
試験の印象次第では、受講生など身近な学習者に受験を勧めようと思っていたけど、ないわー。
結果が良くても悪くても、それが何を意味するのかわからないなら、かわいいうちのコたちに受けさせることはできない。

なによりも気になったのは、リスニングにもライティングにも“なりすまし問題”があること。
家に戻り、改めて攻略本(ヒルキ, 2013)を開くと、「自分にとって本当のことであろうがなかろうが (p. 80)」、「簡単に理由を思いつくほうを自分の主張とし (p. 145)」など、でっちあげで乗り切るよう繰り返し強調されている。
日本の大学生の英会話を聞いていると、「え、そんな人だっけ?」「テキトーなこと言ってるなぁ」と思うことがあるが、あれはこういう試験の経験から、「英語を話す=不誠実でいい」のように自動セットされているせいかもしれない。
実際、正直になろうとすれば言いよどんだり間をとったりして減点されやすくなる。
試験である以上、得点は高い方がよく、高得点のためには嘘をついても、心にもないことを言ってもいいというのは、その文脈に限れば正しい。

ただ、嘘や不誠実を推奨し、学習者のでっちあげを見て見ぬ振りするのは教育的ではない。
学習者にとっては、わずかな得点と引き換えに失うものが大きすぎると思う。
私は英語のことしか知らないけど、たとえば国語の読書感想文のコツみたいなものにも、似たような特徴がありそう。

さらにその夜、たまたま『kotoba』春号をめくっていたら、こんな文が目に留まった。

TOEICスピーキングが日本よりはるかに浸透している韓国では、みんなが英会話を頑張って勉強するわけではなく、例えば一分間のスピーチなど、TOEICに出題される課題をリスト化したものを覚える、あるいは、TOEIC塾で講師が模範解答を教え、それを丸暗記するという現象が起きているそうです。(寺沢, 2019, p. 45)

あぁぁ、これ、読んだのに。
読んだときは意味がわかっていなかったんだ。
確かに試験会場には、立て板に水で時間ピッタリの模範解答を見事に披露している風な人がいたよ。

Reference
ロバート・ヒルキ, 上原雅子, 横川綾子, トニー・クック (2013). 頂上制覇 TOEICテスト スピーキング/ライティング 究極の技術. 研究社.
寺沢拓敬 (2019). データが崩す「日本の英語伝説」. kotoba 2019年春号. 集英社.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です