いわゆる迷惑メールから、言語学習について考える。
「人前に出すなら、ちょっとネイティブに確認すればいいのに…」と思うのは、なにも日本で見かける英語っぽい文字列(参照)に限った話じゃない。
「緊急問題」系のタイトルで送られてくる、日本語っぽい文字列のメールもそう。
大手通販サイトなどを装って、受け取った人が慌ててログインするよう誘導するメール。
私はクリックこそしないが、メールの文面にはきっちり目を通す。
「ははぁ、なるほどー」と思わされることが多い。
こうしたメールの日本語レベルは、ひと昔前に比べるとずいぶん上がっている。
「その努力をもっと良いことに使えばいいのに」というのは、犯罪者に対してよく言われること。
ま、それはそのとおりだし、詐欺は言語道断なんだけど、「悪事という強力なモチベーションがあっても、やっぱり伸び悩むのか」と思うと、言語学習における“中級の壁”はとても厚く、手強いものなんだなぁとやや気の毒に感じないでもない。
“中級の下”あたりかなぁというメールは機械翻訳に頼っているものが多い。
母語の癖がはっきり見て取れ、表記(例:ひらがな・カタカナの使い方)や句読点のミスが目につく。
全体的には、まあ言いたいことはわかるけど、ところどころ意味不明な箇所も。
語彙や文節の知識が不足しているから、切り貼りしているうちにわけわからなくなっちゃうんだろうなぁ。
話し言葉であればアクセントが強く、「片言」の印象を与えるレベル。
ただし日本人英語学習者の場合は、たとえ話し言葉がこのレベルでも機械翻訳に頼っていても、もう少しまともに書けるだろう。
日本語における書き言葉の難しさ、でしょうかね。
“中級の上”かなと思わせるメールでは、なんとか自力で文章を作っているのがわかる。
基本的な文法はおさえているし、母語の癖は目立たなくなっているが、「うぅーん、惜しい」という点がちらほら。
特に敬語に苦戦しており、読み手との距離感を急に縮めすぎるところがある。
話し言葉であれば、日常会話では問題なく意味が通じ、「日本語、お上手ですね」とか言われているレベルだろうか。
そこで満足しちゃうから、伸びにくくなるのよねぇ。
と考えると、第二言語でいんちきメールを書くって大変なことだなぁ。
イマドキの教育現場ではお叱りを受けちゃいそうだけど、「ネイティブを騙せるほどのメールを書く」というライティングの課題があっても
…なーんてね。
最近のメールでおもしろいなと思ったのは、これ。
「XXをご利用いただきありがとうございますが、(中略)異常を検出しました」。
たとえば英語で「thank you but…」とかって言うこと、あるよね。
日本語で「すみませんが…」「申し訳ないのですが…」とかって言うことも、あるよね。
でも「ありがとうございますが…」は、残念ながら、ないんだなぁ。
いや、むしろなんでないんだろうね。
今度、日本語の先生に会ったら聞いてみよっと。