書き忘れてたシリーズ。
そういえば、入国でがっつり止められたんだった。
自宅と自宅の往復には、1~3回の乗り継ぎがある。
心配性の母でも連れているときはたっぷり余裕をもって旅程を組むが、一人のときは待ち時間が最短になるように計画する。
もちろん冬なら雪、それ以外の季節にも空港ではなんだかんだ起きるので、待ち時間が短いせいで乗りそこねることはある。
ま、でもそれには慣れているし、うまくいくときはうまくいくので、毎回「間に合わなければ途中泊」の覚悟と準備をして、1分でも速く帰宅できる可能性に賭けているのだ。
シカゴには、予定より1時間以上も早く到着した。
待ち時間2.5時間+1時間の貯金=3.5時間。
「いつものお店で少し早めの夕食をとって、いつものお茶屋に寄って、いつものカウチでのんびりすっかな」と思っていた。
ところが。
イミグレーションがなにやらゴタゴタしている。
ESTAの機械が故障したんだって。
ビザ有りの列に観光客らしき人たちがどんどん送り込まれてくる。
ま、そのくらいはいいさ。
「はじめての海外旅行」で、ガイドブックに載っていないことが起きて緊張してる人もいるだろう。
かわいそうに。
どうも審査官のブースにも不具合が起きているようで、なんとクルーの列でさえ全然進まない。
飛行機は後から後から、お構いなしに着陸する。
仕分けの係員も総動員という感じだけど、どのおばさんもかなり機嫌が悪くなっている。
遠くて様子がわからないけど、たぶんブースも機嫌が悪い。
機嫌の悪い係員を避けるべく、シカゴにしたのに。
やだなぁ。
貯金の1時間はあっさり使い果たし、もともとの待ち時間にも食い込んできた頃、ようやくブース前の振り分けポイントに到達。
ちなみに、フォークのあそこんとこは「すくい根」というらしい。(参照)
「ま、ちょっと慌ただしいけど、1時間あれば間に合うだろ」と思っていた。
そこへ、中国人と思われる若い男性が息を切らしながら振り分けポイントにいきなり割り込み、係員のおばさんに止められた。
「横入りはダメ。戻って、あの後ろに並びなさい」
「乗継便まで時間がないんです」
「条件はみんな同じよ。この列に入っていいって、誰に言われたの?」
「航空会社の人に言われました」
おばさんは男性ともめながら、私にブース番号を指示。
男性は、英語は上手だけど、アメリカ文化には慣れていない感じだった。
ということは、母国であそこまで上達させてきたってことかな。
日本もがんばろうね。
ブース前の列は本当に進みが遅く、だいぶ疲れが出てきた。
ふと後ろを見ると、さっきの男性が。
お、横入り許してもらえたんだね。
緊張した面持ちで、何度も時計を確認している。
かなり危ういけど、まだ間に合いそうってことか。
ハカハカするよね。わかるよ。
そういえば、このビザ有りエリアにいるのはアジア人の若者ばかり。
手にはパスポートとI-20の他、成績や卒業の証明書、合格通知的なレターなど、「要らんやろ」と思われるものをいろいろ持っている。
で、急にわかった。
彼らはアメリカ初上陸の留学生たちだ。
新学期までにはまだ2ヶ月近くあるけど、英語のコースとかオリエンテーションとか、学期前のいろいろがあるんでしょう。
私の後ろに並ぶ彼の、真面目さにも英語の上手さにも、不慣れっぷりにも納得。
そういうことなら、この状況に置かれていることがえらく気の毒になってきた。
前の人が呼ばれ、いよいよ次となったところで振り返り、彼に「乗り継ぎまで、あと何分?よかったら先に行く?」と聞いてみた。
彼は固い表情のまま「Thanks」と言い、私と入れ替わり、入国審査を無事に済ませて去っていった。
シュッとしてて悪いヤツではなさそうだけど、アメリカでは愛されにくいタイプかもね。
ここから始まる新生活で、たくさんの学びがありますように。
審査官に呼ばれ、いつもどおりの何でもない質問に、いつもどおり順調に答える。
「カミサマはこうして若者を助けた私を見ていて、ここから先はスルッと通過させてくれるんだろうな」と思っていた。
ら。
のに。
まさかの別室送り。
勝手にパターンを読んだりしたから、カミサマの気に障っちゃったみたい。
ごめんなさい。
しかも「他の列から送られてくる人たちがある程度たまるまで、そこで待ってろ」と。
つまり、「あの後ろに並べ」と指示するための目印にさせられた。
韓国人、中国人、ベトナム人の留学新入生たちが次々と送り込まれてきて、私に「どういうこと?」「この後どうなるの?」「乗り継ぎに間に合わなくなっちゃう」などと不安そうに言ってくるのをなだめる。
わしゃ引率か。
で、陽気なオフィサーのおじさんが現れて、私たちはまとめて別室に連れて行かれた。
「ずっと前に一度、ハズレちゃんにやられたことがあったな」と思った。
後で検索したら11年前だった。(参照)
がらんとした部屋でやきもきしていたあの頃の自分を、今日は引率してきた子たちに重ねる。
ガイジンの私たちにできることは何もないのよ。
別室に入ってビックリ。
さっきまでのイミグレーション以上の混雑っぷりで、座るところもないぐらい。
ヨーロッパ人が多い。
赤ちゃん連れやお年寄りもいる。
みんな長旅で疲れているんだろう。こんなに大勢いるのに、静か。
携帯電話の使用は禁じられていて、触っている人を見つけるとすぐにオフィサーが注意する。
冷房は弱めで、空気がどんよりしている。
そこから2時間。
私の乗継便は搭乗開始。タイムアップ。
そんならそれで、しょうがない。
他の人たちもかなり長時間待たされているようだし。
と思った頃に名前を呼ばれた。
案の定、何一つ質問されることもなく、ペラっとパスポートを返され、別室送りになった理由の説明もなく解放された。
で、同じことが最近あったのを思い出した。
5月にカナダから帰ってきたときにも止められて、なぜか母だけが、なぜか片手だけの指スキャンを受けたんだった。
ぜんぜん久しぶりじゃないじゃん。
そのときも、「この国は本当に変わったな」としみじみ思ったのだった。
これがUSA。
ドリームの見方をインスパイア。
解放されたとはいえ、私の乗継便は30分も前に飛び立ってしまっている。
ま、しょうがない。
「ホテルのお風呂に入浴剤でも入れて、疲れをとろう」「この場合、航空会社に落ち度はないけど、どういう対応になるのかな」などと思いながら、デスクへ向かう。
「間に合わなかったんで、振り替えてください」と言うと、係員のお兄さんはちょこちょこっとタイプして、画面を見て、表情を変えた。
「キミの乗継便、遅れが出てる。まだ間に合うよ!」と興奮気味。
えぇぇ。
「新しい出発時刻まであと30分。がんばれ!」
で、急に忙しくなって、荷物を再度預けて電車でターミナルを移動して、セキュリティを通過。
ゲートが遠いのはいつものことだけど、今回はさらに地下かよ。
んもー。
で、どうにかたどりついてみると、まだゲート前にたくさんの人がいる。
というか、係員も乗客も、みんなのんびりしている。
オヤ?
「そうだ。お迎えに到着時刻の変更を連絡せねば」と思って電話の電源をオンにすると、航空会社からメール。
なんとさらなる遅れ。
搭乗開始まで15分ある。
おぉぉ、そういうことなら夕食と飲み物が買えるじゃん。
地上に戻って、調達。
急いでゲート前に戻ると、また遅延。
その後も20-30分ぐらいずつ再遅延、再々遅延の通知メールが届く。
「おなかすいたけど、機内で落ち着いてからにしよう」と思って開けずにいた夕食をとうとう開け、新しい出発時刻に「どうせまた変更すんでしょ」と悪態をついていたら、半分ぐらい食べたところで急に乗せられて、急に飛んだ。
どないやねん。
積み上げられた遅れは、計1時間40分。
ま、日付が変わる前に帰宅できたから、よしとしよう。