クジラのコツ

ボストンでホエールウォッチングに行く人のために、コツを伝授。

周りに経験者もなく、ネットで予備知識を集める暇もなく、ぶっつけ本番で当日を迎えたにもかかわらず、「これ、満点なんじゃないの?」という体験ができた。
というわけで、たまにはトラベルガイド的に書き記しておこう。
いつかどこかの誰かが参考にしてくれるかもしれないしね。

まず、ツアーの申し込みはBoston Harbor Cruisesの公式サイトから。
ホエールウォッチングをやっている会社は他にもたくさんあるし、それなりにお値段の違いもあるのだけど、こういうタイプのツアーは大手、どメジャーがオススメ。
少しばかりのお安さのために、たとえば当日ドタキャンになったり、小さい船で揺れがひどかったりするのは残念すぎる。
特に今回は両親を連れていて、他の日時への振替えがきかないので、安全第一。
BHCのチケットをほんの数ドル安く売っているディスカウントショップもあったけど、余計な心配を増やすには割引率が低すぎるので、公式サイトで定価でチケットを予約した。
他社と比較したわけじゃないので「コツ」とは言えないけど、船のスタッフや案内はよかったし、ツアー料金として不満はなし。

ツアー後にランチを予定して、平日朝10時の回にする。
パッケージにもできる水族館は、ボストン在住の友人に「料金の割にたいしたことないよ」と聞いていたので、パス。

当日は電車で乗り場へ向かった。
駅から少し歩くとすぐにチケット売り場や船が見えてくる。
公式には「出発30分前までに来い」なんだけど、ま、そのあたりはアメリカンなので、わりとギリギリまで当日券を買って乗ってくる人もいたみたいだった。
公式といえば、靴、防寒具、日焼け止めなどの注意事項はFAQsに載っているとおり。
これは当たり前なので、「コツ」には入れないよ。

私たちは、心配性の母を安心させるべく早めにホテルを出て、同行した妹分がしっかりナビしてくれたおかげで、ちゃんと30分前に到着する優等生っぷり。
で、ほとんどの客がデッキや3階の立ち見席で写真を撮ったりしている中、なんとなくテーブル席についた。
これが結果的には大ヒット。
【コツ1】乗船したら2階のテーブル席をゲットする。

出港までの時間を利用して、1階の売店やトイレに行く。
「a terrific selection」は明らかに言い過ぎで、駅などにある売店みたいなもん。
スナックとかサンドイッチとか、まあ普通っちゃ普通だけど、日本人的においしそうなものはない。
出港前後に船内で食べている人も、軽く一杯やっている人もいたけど、あの人たち、後々大丈夫だったのかな。

私たちは、毎日10時におやつの習慣がある両親が日本のお菓子をちゃっかり持ってきていたので、飲み物だけ買った。
これも、後から考えると“満点”な対策だったと思う。
【コツ2】食べ慣れているお菓子や軽食を持参する。

みんながデッキではしゃいでいるのを窓越しに見ながら、ゆっくりと出発。
船が動き始めると、「おぉぉ、いよいよだね!」なんてどうしても浮かれるんだけど、さ。
そこからが、長い。
最初のうちは、外の強風と寒さで盛り上がってる人もいたけど、それも長くは続かない。
沖に出るまでほとんど何もないので、テンションも落ち着いて、みんな続々と船内へ入ってくる。
この頃にはもうテーブル席はもちろん、窓側から遠い中央のイス席でさえも埋まってしまうわけで、「テーブル席にいてよかったね」となる。
それでも1階よりは明るいし、いちおう景色は見えるから、2階にいる人が多かったんだと思う。
屋外のベンチや3階にいるなら、ダウンジャケットなど、真冬並みの防寒が要る。
【コツ3】沖へ出るまでは室内でまったりしておく。

沖に出て、クジラが見えてくると、またデッキや3階が混みはじめる。
「右に見える」と言われれば右へ、「左に見える」と言われれば左へ、カモメの群れを目印にみんなキャーキャー言いながら移動する。
このあたりはたとえばお祭り好きかどうかとか、当日のクジラ出没率とかにもよるので一概には言えないけど、とりあえず序盤は遠くにチラッと見える程度のものなので、そう慌てて追いかけなくていい気がする。
でもまぁ、あんまり出没しない日だったら、たとえ序盤でも遠くでも逆サイドでも、見ておいた方がいいだろうね。

というのも、私たちが行った日は当たり日だったらしく、クジラはその後、右にも左にも、もうアナウンスが追いつかないぐらいボッコボコ現れたから。
それも、結構な長時間、海面に頭を出しっぱなしだったりするので、見逃しにくい。
「あのカモメが止まってる塊は、岩?」「どれのこと?」なんて言ってると塊が沈んで、「あ、あれもクジラだったのか」と気づく、ってな感じ。
両親は途中で何度かデッキへ出ていったけど、私と妹分はテーブル席のまま。
それでも結構な数のクジラが見えた。
最初はいちいち大興奮だった私たちも、近くでグワッと見えることに慣れちゃって、すっかり目が肥えちゃって、中盤以降は遠くで潮を吹いてるぐらいじゃ反応しない体質になってしまった。
贅沢ねぇ。

そんなわけで、クジラの見え具合は日によって違うだろうからなんとも言えないけど、私たちの体験に限っては、十分すぎるぐらいの近さ、数、迫力でたっぷりホエールをウォッチできるツアーだった。
実際、クジラが出ない日には沖でしばらく粘ってツアー時間を延長するらしいけど、私たちが参加した回は、「まだクジラはいるけど、そろそろ帰りましょっか」という感じで、さくっと終わりにしてたからね。

一方、コツ的に重要なのは、船酔い対策。
船はなにかに捕まらないと立っていられないぐらいに揺れるし、たくさんの人が酔っていた。
うちの場合は両親は船に強く、妹分は過去データなし、心配なのは車酔いしがちな私だけ、という構成だったのだが、そんな私でもなんとか大丈夫だったのは以下のポイントのおかげだと思う。

【コツ4】文字などを読まないように、なるべく遠くを見ておく。
みんな普通にスマホしてたけど、やめておいた方が無難。
【コツ5】空腹すぎず、満腹すぎず、の状態を保つ。
ここで「コツ2」が効いてくるわけよ。
【コツ6】酔った人の残した“現場”が視界に入らないよう、おしゃべりして気を紛らわす。
日本だったら即座に片づけてくれるだろうけど、そうはいかないからさ。
【コツ7】途中で配られるジンジャーキャンディは超まずいけど、必ず食べる。
船上じゃなかったら食べられないまずさだけど、それがいいんだと思う。

私たちはずっと2階にいたけど、途中で一度トイレに行ったとき、1階は揺れがずいぶん少ないなと思った。
なので、
【コツ8】酔いやすい人は1階へ。
景色やクジラは見えなくなっちゃうけど、しょうがないよね。

というわけで、私たちは酔うこともなく、陸に戻ってまっすぐお目当てのレストランに向かい、予定どおりランチを楽しむことができた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。