実家の近所に現れる、豆腐の移動販売車のこと。
毎週木曜、お昼ごろ。
日本人の耳には「とーふー」としか聞こえない、あのラッパの音がだんだん近づいてくる。
といっても、もちろん実際に吹いているわけではなく、ラッパは録音。
母によると、ラッパの音が聞こえるようになったのは、ここ数年のこと。
そうだよねぇ。
私が子どもの頃には、アイスクリームや焼き芋はあったけど、豆腐の移動販売車なんてなかった。
昔っぽさを演出してるけど、あれは「ビジネス昭和」なのだ。
そして、別のある日。
遠くにラッパの音が聞こえた。
「え、今日は月曜なのに?」と思っているうちに音が近づいてくる。
近づくにつれ、ラッパ音の合間に、なにやらヒップホップな音楽が。
なんだなんだ??
どうやら木曜に来る豆腐屋のライバルが月曜に現れたらしい。
それから数週間、毎週月曜の昼頃にやってくる豆腐屋の音楽を突き止めるべく、母とふたりで耳をすませた。
イマドキの移動販売のスピーカーは、なにかしらの新しい技術を使っているのだろう。
ラッパ音はある程度の距離があっても聞こえるが、音楽は目の前を通ったときにしか聞こえない。
つまり、通り過ぎるとすぐに聞こえなくなってしまうのだ。
だから、うちの前を通るタイミングで、ラッパ音や、歌の出だしらしい「ティー!オー!エフ!ユー!」が来てしまったときなどは、「んんんー、そこじゃない」と身もだえることに。
音楽を確認するために、お豆腐を一丁買おうかとさえ思ったが、どうやらトラックを止めると音楽は止まる仕組みらしい。
なるほど。
現代の日本で移動販売をやるには、近隣住民のみなさまへの配慮が不可欠だものね。
そんなわけで、ごく断片的にしか聞こえない音楽の、かろうじて聞こえた「安心安全いただきまーす」や「太陽と大地の力」という歌詞から、この音楽が”I LOVE TOFU”という曲だと特定するに至った。
すっきり。
さらに調べてみると、この曲は日本豆腐協会推奨だということがわかった(参照)。
んまー。
そうこうするうちに、なんと水曜日にも「とーふー」が現れるようになった。
木曜の伝統的風なのとは趣の異なる、やや軽めのラッパの音色。
第三の移動販売が新規参入してきたのだろうか。
てか、なんなの、この急な豆腐激戦地区化。