スープ

たまたま利用した日系航空会社の機内で、とってもおいしいスープが飲めた。

「上空35,000ftに、お店を出した」というコンセプトで、3-5月の限定企画なんだってさ。(参照
テーブルに食事が届いた時点で、いちおう手元のモニターで高度をチェックしたら、ぴったり35,000ftだった。
芸が細かいね。

日系の航空会社は、それはもう、何から何までもんのすごく丁寧で、つい「そこまでしなくても…」とネガティブ寄りの感想を持ってしまうことが多いんだけど、これについては、ただただありがたかった。
特に今回は両親が同行していたので、慣れない長時間のフライトの終盤に温かいスープをおなかに入れることができ、ホッとしてもらえたというのは本当に本当にありがたかった。
着陸後、元気よく移動できたのも、直前にこのスープをいただいたおかげだろう。
お世話になりました。

機内が常に適温に調整され、毛布などもちゃんとしてるこの状況でこれだけおいしくありがたいってのは、すごい。
やりすぎは否めないけど、やりすぎもここまで来ると一周まわって敬服する。
「こんなに良い経験をしちゃったら、もうあの寒い機内で提供されるカサカサ、パサパサの食事には戻れないなぁ」と思った。

…いや、待てよ。

今でこそ私はアメリカに対する好きじゃない感も、日本に対する好きでたまらない感も薄れているけどさ。
しかも今回はほぼ観光客モードだから、フライトもウキウキ楽しめるんだろうけどさ。
これがたとえば留学初期だったら、どうよ?
日本から離れたくなくて、アメリカに行きたくなくて、ボロボロ泣いて心配されていた頃の私が、飛行機の扉が閉まってようやくあきらめて、10時間あまりやりすごして、やっと覚悟を決めたところへ、こんなスープが届いたら。
カップにプリントされた「空の上で、一杯のスープが食べられたら。心もからだも温まる時間です。」なんてメッセージを読んでしまったら。

間違いなく日本に戻りたくなる。
アメリカに降り立つなんて、きっとできない。
その場で窓をこじ開けて、飛び降りようとするかも。

あるいはこの感じを引きずって、アメリカ生活をスタートさせていたら。
不満や不安や不足が多すぎて、私はつぶれていただろう。

このスープはとってもやさしくてあたたかくてありがたいけど、いろいろを振り切って、歯を食いしばって戦いに出ていく場面には向かない。
あの頃の私がこの飛行機に乗っていなくてよかった。
せっかくがんばって一歩を踏み出した後に、後悔や迷いが生じてしまうところだった。
あの頃の私には、あの雑でテキトーでお気楽な、至れりも尽くせりもしない、寒くてパサパサのサービスじゃなくちゃいけなかった。

アメリカ文化をたっぷり経験できる人生でよかった。

「スープ」への2件のフィードバック

  1. すごくよくわかります。実感です。

    私は留学などの長期滞在は経験ありませんが、出張の際に 「さあて、タフな雰囲気の中でめげないように、覚悟決めなきゃ」と思っている真っ最中にあんなに甘やかしてもらったら、降りてからの落差が思いやられます。

    国内出張の時ですら、そう感じることがあるほどですから。
    (とくに JAL。 今月末に乗らなきゃいけないんですけど)

  2. ですよね。

    長時間のフライト中に「うーむ」と思ったことは他にもいろいろあって、また別途書くつもりですが、結局のところすべては「甘やかし」に集約されるのだろうと思います。

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