ひょんなことから、急に日本語の縦書きに興味を持ち、身近な人たちに聞いてみた。
ある日本の国語の先生に、国語科では「縦書きをどうするか」という熱い議論があるらしいことを聞いた。
書棚のほとんどを英語か日英併記の本が占めている私は、むしろ「日本語は横書きもできて便利」ぐらいの印象しか持っていなかったのだが、言われてみれば、なるほど。
「縦書きの将来は明るくない」という説が、かなり勢力を持っているようだ。(参照)
私は縦書きにも横書きにも特に思い入れはないけど、日本語の縦書きを守りたい人たちにとっては、厳しい世の中になってきてるわけね。
じゃあ東アジアの他の国はどうなってるんだろう。
というわけで、友人たちに取材を申し込む。
友人たちはたぶんみんな30歳前後なので、ここでいう「子どもの頃」とはざっくり1990年代頃のことだと思われる。
まずは台湾人のI。
「子どもの頃は縦書きばかりだったけど、最近は横書きが増えてる。」
やっぱりねぇ、日本と似てる。
「たまに中国の簡体字の本を見たりすると、みんな横書きなんだなって思う。」
おぉぉ、そうなのか。
というわけで中国人のKに聞く。
「そう、中国では縦書きの本はもうほとんどないよ。博物館とかに行くと縦書きの本ばっかりだけどね。
『縦書きを残そう』っていう動きもないわけじゃないだろうけど、特に声高に言われてはいないなぁ。」
続いて、韓国人のY。
「うちも中国と同じ。私が子どもの頃は縦書きだったけどね。
今は縦書きは新聞とかでもほとんど見ないし、『縦書きにしよう』っていうのも聞かない。」
なるほどなるほど。
これに関しては、伝統を守りたがる日・台と、簡略化、合理化をよしとする中・韓で、考え方がきれいに分かれてるっぽい。
さらに、台湾人Iが言う。
「私が横書きに出会ったのは、英語を始めてからだったと思う。読みにくくて、時間がかかるなぁと思った。
英語だと気にならないけど、中国語の横書きは今も読みにくいと感じる。」
ほほぉ、おもしろい。
文化庁がふわっと言及したり(参照)、「可読性」の調査でさらっと触れられているとおり(参照)、要は慣れなんだろうね。
母語とか第二言語とか、関係なく、ね。
このあたり、日本の小学校英語界隈の人たちにとってネタになるかも。
世界の書字方向については、カタログ的なページ(参照)を発見。
国語/日本語ではなくデザインの話だけど、ウェブ上の縦書きを普及させようという動きもあるようだ(参照)。
国語/日本語学以外で日本語の論文をざっと探したら、言語学(参照)、教育学(参照)、認知科学(参照)などの研究が簡単に見つかる。
手垢のついた分野なのね。
中国の例などから察するに、政治的な関わりもあるから、そっち方面でも研究されてそう。
言語の社会的な変化を鋭く観察していそうな人たちの見解(参照)はおもしろそうな一方、ありがちな外国語教育がらみの国語/日本語論になってくると、急速に興味が薄れる。
要するに、Prescriptive vs. Descriptive になっちゃって、埒があかないからだろうな。
私は自分の中に伝統派と合理派が混在しちゃってます。その点について、3月 3日付 Today’s Crack で書いてみました。
ありがとうございます。私も日本は「両方アリ」というところで落ち着くだろうと思っています。むしろ、「横書き草書体」のようなフォントが発明されてもいいんじゃないでしょうか。左下から右上への流れを見越して崩すやり方は偏などですでに確立しているわけですから、さほど突飛なことでもないように思います。
うぅん、草書体は変体仮名とのミックスでないとオモムキがないので、「横書き草書体」が開発されたとしても、読める人がほとんどいないでしょうね。
行書体なら可能性あります。
かなは特にですが、ポイントは横書きの連綿ですよね。それが発明されたら、伝統と合理化の融合が起きそうです。横に美しさが出るタイプの文字が日の目を見る、なんてこともあるかもしれませんし。