窓辺

週末の昼下がり。
にも関わらず、ひたすらパソコンに向かっていたときのこと。

視界の外、右後ろで何かが動いた。
見ると、窓のすぐ外側に植えられているshrub(低木)が激しく揺れている。
ガサガサガサッ。

このshrubは、私がここに住み始めた頃には窓の外を覗き込まない限り見えなかったと思う。
いつの間にか成長し、今はデスクに座ったままでも、左側の窓の下の方に、頭の先が10cmぐらい出っ張ってきているのが見える。
夕方、小鳥が集まって騒がしいことはあるけど、小鳥にしては揺れが大きい。

まもなく、リスのしっぽが見えた。
この時期のリスは体が大きく、しっぽもふさふさ。
おいしい実が生っているわけでもない低木の、この細い枝を、なぜあえて登る必要があるのか。

そしててっぺんまで登りつめると、あろうことか、窓の方へと渡ってきた。
後ろには広大な庭があるというのに、この狭いレンガ1個分の幅しかない窓辺に、なぜあえて身を押し込む必要があるのか。

で、目が合った。
後ろ足で立ち、両手をそろえて、こっちを見ている。
見たって何もおもしろくないよ。
窓は閉まってるんだし、うちにはエサもないよ。
帰っとくれ。

パソコンに向きなおったが、右側から視線を感じる。
まだ見てるのかい。
週末に締切に追われて仕事する姿がそんなに珍しいかい。
帰っとくれ。

だいたいねぇ。
キミたち小動物は、人間にかわいいと思われてると思ってるでしょ。
そうやっておなかをぺろんと見せて立ってたら、私に喜ばれると思ってるでしょ。
違うよ。
どんなに小さくても、私はキミが怖いんだよ。
帰っとくれ。

するとシュッと姿勢を変え、右側の窓に移った。
だから。
そうやって急に機敏な動きをされるとビックリするんだよ。

そして右側の窓辺でまた後ろ足で立ち、こっちを見る。
いや、確かにそこの窓は開いてるけど、その、キミが爪をかけてる網戸、それ外れないのよ。
ひょっとして私のこと、ケージに入れられた動物だと思ってる?

と思ったら低い姿勢をとり、窓枠にアゴを載せたような格好で、引き続き覗いてくる。
なにそれ。
上目づかいで小顔に見せる自撮りテクニックかい。

わーかったよ、かわいいかわいい。
帰っとくれ。

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