「気持ち悪くない英語」のための授業アイディア。
日本の街にあふれる、英語に見えて英語じゃない文字列。
言いたいことはだいたいわかるけど、なんとなく気持ち悪い英語。
日本人にしか通じない、ガラパゴスで不思議な英語。
それらがあること自体は、とりあえずしょうがない。
文句ばっかり言っててもどうにもならない。
すぐどうこうできる問題じゃないけど、せめて”次世代”に受け継がないようにはしたい。
で。
まず学習者の目をそこに向けさせ、気持ち悪さを感じさせ、考えさせ、気持ち悪くない英語を生み出すための授業を考えてみた。
せっかく身近にあふれてるんだからさ。
あるものは使おう。
【ゴール】
・日本で通用している“英語”の現実を正しくとらえる。
・言語に対して感度を上げる習慣をつける。
・日本国外でも通用する英語を書く。
【準備】
講師は不思議な“英語”のサンプルをいくつか用意しておく。
ポスター、看板、パッケージ、ウェブサイトなど、なるべくいろんな形のものを広く集めておく。
【第1回】
・受講生にサンプルを見せ、感じたことを自由に話してもらう。
感想がデザインなど、文字以外の要素に偏っている場合も、修正せず、そのままにしておく。
・文字情報に注目させる。
スペル、文法、表現など、「英語としてどうか」という視点を与える。
特に問題と感じず、講師の意図が見破れなくても、それはそれでOK。
・外国人によく指摘されている不思議な“英語”の例を見せる。
宿題として、同じような例を見つけて、どこがどう指摘されているか読み取り、感想を書いてくるよう指示。
検索キーワードとして「Japanglish」や「和製英語」、「Funny Japan English」などを与えておく。
・最終課題の説明
外国人に伝えたい、日本のモノを1つ選び、それを国外の人々に宣伝するためのポスターを作り、コースの最後に発表する。
どんなモノを、なぜ宣伝したいか、ぼちぼち考えておくよう指示。
クラスサイズに応じて、個人でも、ペアでも、グループでも、それぞれ自由に選択させても。
【第2~X回】
・みんなで持ち寄った“英語”をもとに、発表やディスカッションをさせる。
単語/語彙に偏っている場合は、そこからうまく文/文法/ディスコースレベルに持っていけるようにリードする。
・翻訳の練習をする。
不思議な“英語”を日本語訳してみる。
その日本語訳を英訳してみる。
適宜、添削や指導を行う。
・似たような商品・ケース・デザインについて、英語圏ではどんな英語が使われているか調べさせる。
日本の“英語”との違いや感じたことを書き留めるよう指示。
・最終課題の準備を段階的にチェック。
どんなモノを選び、どんな作品を仕上げるつもりか、後になってバタバタしないように小分けにチェックしておく。
すでに広く紹介済みのモノなど、安直な選択をしないよううまく導く。
受講生のキャラによっては架空のモノに絞ったり、ポスター以外の方法も可としたりすると、よりおもしろいことが起きそう。
特に説明文の英語は語彙、文法、ディスコースの面で英語として不自然でないところまで引き上げる。
指導の際は、「どこが気持ち悪く、どうすると気持ち悪くならないか」ということを、必ず本人に考えさせるようにする。
【最終回】
・ポスター展示、感想、ディスカッション、ペーパー提出など、受講生のキャラに応じたシメを行う。
・「気持ち悪い」から「気持ち悪くない」(あるいは「別に平気」から「気持ち悪い」)へどう移行したか、作品制作の中で、文章や表現のどこをどう修正したか、推敲の過程を説明させる。
・第1回に使ったサンプルをもう一度見せ、見方や感じ方がどう変わったか話し合う。
【成績】
成績の付け方は、以下のようなポイントで、適切に重さを分配し、第1回の授業で説明しておく。
・Participation (出席、発言の質)
・Assignments (締め切り、宿題の内容、最終課題)
必ずしも成績と直結させなくてもよいが、独創性やおもしろくしようとする姿勢を加点対象にしてもよい。
題材の性質上、ともすると、間違い探しやアラ探し、ダメ出しなどの良からぬ方向へ進む可能性があるので、そうならないよう工夫する。
最終課題の作品集をウェブで公開して、外国人からフィードバックをもらえるようにセットしてあげると受講生の達成感が増しそう。