ありえない話

そんなヤツ、おらんやろ。

帰国の朝。
お迎えが来る前に、と、スーツケースを庭の先の、車が通れるところまで出す。
芝生の間に敷かれた通路を、いつもならスーツケースを先導するかたちで引くのだが、それだと石と石の継ぎ目に輪が引っかかる。
で、ふと「これ、押したら速いんじゃね?」と思いつく。

ダダーッと押しながら小走り。
スピードに乗ったころ、スーツケースの輪が、石と石の間にガッッと引っかかって急停止。
スーツケースを飛び越え、石の上に落下。
ズザザッ。
顔、手、足を負傷。

ひとまず家に戻り、傷の手当て。
お迎えに来てくれた友人にも手伝ってもらって、とりあえず止血して空港へ。
搭乗後、唇が腫れて変色していたのに気づかず、機内の人々を怖がらせただろうことを反省。
親にショックを与えたことを深く反省。

翌日から外科、整形外科、歯科、皮膚科のお世話になる。
歯や骨は丈夫だったらしい。
“片足歩き”や“ラップ巻き入浴”もすぐ上達。

急遽、国民に入れてもらって保険の恩恵にあずかる。
素晴らしいシステム、超絶親切な人々。
ケガ人、病人、高齢者になるなら日本がいちばん。
ものすごくありがたいけど、それはそれで問題、とも思う。

旅行や仕事はいちおう予定どおりこなせたが、ビザ更新に必要な証明写真を撮ることができない。
包帯が取れた日にさっそく写真を撮って申請したが、どこか冷静さを欠いていたのか、普段なら間違えるはずもないメールアドレスを入力し間違え、予定より大幅に時間がかかってしまう。
パスポートが戻ってこないので、やむなく滞在を延期。

そんなヤツ、おらんやろ。

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