メンテナンスのおじさんのグチに付き合う。
玄関のベルが鳴ったので出てみるとメンテナンスのAが。
おぉ、久しぶり。
階下で水漏れがあったので、念のためバスルームとキッチンの点検に来たという。
古いアパートだからね。
点検をするAに「元気だった?」と聞いたところ、「まぁね。もうすぐ引退だから」と言う。
「1月の誕生日に退職して、あとはのんびり暮らすつもり」と。
「えぇぇ。寂しくなるわー」と言うと
「この仕事もさぁ…、全住民がキミみたいならいいんだけど…」
そこからグチが始まった。
Aと出会ったのは私がここに引っ越してきた2007年。
最初に住んだStudio は隣がボイラー室だったこともあって、何かとメンテナンスを必要とした。
後に今の部屋に引っ越すときにもいろいろと手伝ってくれた。
あるとき、当時の管理人Nに何か頼みごとがあって「誰でもいいからお願いします」と言ったら、「emi のところへはAが行くことになってるから、ちょっと待って」。
「え、なんで?」と聞くと
「Aはあなたのことを娘みたいに思ってるからねぇ」と言われた。
点検は異常なしで1分ほどで終了したが、そこから20分ぐらい、立ち話。
Aは口癖の”How call for this”を交えながら独特の英語で滔々と語ってくれた。
18年の勤務、うち15年間メンテナンスの長として、24時間メンテナンス完備のこのアパートを見てきて、とにかく住民の質が落ちたと言う。
以前は退職したシニアとか、何十年も住む顔なじみばかりだったが、今は若い家族やキャリア世代、外国からの留学生が増え、短期で入れ替わりが激しく、そのたびに仕事が増えるし、庭で騒いだり夜中に音楽をかけたり、タバコやゴミの問題を起こしたり、夜中にちょっとしたことで呼びつけられたり、「こっちはカネ払ってんだぞ」という態度をとられたり、ご近所トラブルの間に立たされたりすることが多くなったという。
「メンテナンスの仕事なら構わない。でも人間はね。人間を変えることはできないから」。
はー、なるほど。
「でも、感謝してる人もいるってことを忘れないでね」と言うと、「そりゃそうだよ。いい人の方が多い」と言いながらドアを開け、出て行くのかと思いきや、「でもね」と言ってドアを閉める。
で、グチが再開する。
「残りの4ヶ月で良い思い出いっぱいつくってね」と言うと、「いやぁ、今までだっていいことはいっぱいあったよ」と言いながらドアを開け、「でもね」と言ってドアを閉める。
そんなことが2-3回。
Aが来たとき、私は作業中だったしお茶も淹れかけだったけど、ま、ずいぶんお世話になったしね。
たまにはグチぐらい聞きますよ。
気温26Cでうちは冷房を入れていないので、最終的には暑くていられなくなったんだろうけど、もし涼しかったらもっと話していたそうだった。
来年からここはAのいないアパートになるのかぁ。
いろいろ、もろもろ、潮時なんだろうな。