外国帰りでこの地域に不慣れなアメリカ人を迎え入れてみた。
4月にパリへ行ったとき、師匠の紹介で出会ったD。
来学期から師匠に弟子入りすることが決まっていて、「新入りがパリの学会に参加する。姉弟子として世話してやってくれ」と、ややふざけて意訳するとそんなようなことを言われた。
そんな紹介のされ方だったので、パリに住んでいる人なのか、少なくともヨーロッパ人なのかと思っていた。
ホテルのロビーで待ち合わせ、「はじめまして」をして話を聞くと、Dはルイジアナ出身のアメリカ人。
少しアジアが入った美人で、落ち着いた雰囲気。
Dが住んでいたのはパリでもアメリカでもなく、トルコ。
師匠の指示で、主に私たちに会うためにパリまで飛んできた、と。
ちなみにパリに来る途中で、偶然にも日本に寄ってきた、と。
さらに師匠とはメールのやり取りだけで、まだ会ったことがなく、その日の午後の講演で初めて会うのだ、と。
ま、師匠周辺の人たちは、私も含めて、ユニークな経緯で弟子入りに至ることが多いけど、こりゃまた、特に訳わかんないね。
本人はボケてるつもりなんて一切ないけどツッコミどころ満載。
そんなこんなでパリ滞在中を一緒に過ごし、Dはトルコへ、私たちはアメリカへ帰った。
6月下旬、たまたまあるルームメイト募集の情報を見かけたのでメールで知らせると、もう住むところは決まっていて、さらに「明後日にはそっちへ着くよ」というタイミングだった。
で、なんだかんだで、今日。
同じDepartment の仲間にも声をかけて、ミニ昼食会となった。
「Welcome? Welcome back? いややっぱWelcome か」とか、そんな感じで。
「6年ぶりの母国はどーよ?」と聞くと、Dは「すごいヘンな感覚」、「カルチャーショックがひどい」と言う。
「モノはなんでも大きいし、人はみんな大きいし。ニューヨークの人たちの英語は速くて、みんな映画に出てくるみたいなしゃべり方だし…。こういうレストランで働いてる人たちが金髪白人ばかりっていうのも、すごい違和感。もう、何がなんだか」
これをさ、20歳ぐらいの外国カブレが言うならわかるけど、Dのような大人が、静かな柔らかいトーンで言うわけだよ。
しかも、バリバリのアジア人を相手にね。
それだけでもおもしろいのに、さらに真面目な中国人のFが悪気もなく「あなたの英語は上手よ」なんて慰めたりするわけだよ。
わはは。
完全にコントやんか。
パーティー行かなあかんねん。
母国だけど地元じゃない。
外国帰りだけどガイジンじゃない。
それでいてガイジンよりガイジンっぽい。
3週間が経過して、まだ“アメリカ”には不慣れなのに、一方で、トルコ語は早くも忘れはじめているという。
母語の力ってすごいね。
それにしても、久しぶりに母国に帰るって、大変。
「emi もこうなるよ」と言われた。
うん、まぁ、そうだろうね。