“Marketeer” という語のこと。
TED日本語字幕の承認作業の最終段階で校正の方から、「”Marketeer” の訳って『マーケター』で問題なかったんでしょうか?」という質問を受けた。
翻訳の方に意図を確認すると「(’e’ が1個の)”Marketer”だと思っていた」とのこと。
ただ、音声を聞けば講演者は確実に”Marketeer”と言っており、スペルの間違いではないことがわかる。
翻訳・校正と違い、承認では明らかな誤訳でなければわりと大目に見ることになっている。
この”Marketeer” は文脈からして「マーケター」で問題なしとしてそのまま通していたのだが、せっかくご指摘いただいたので「マーケティング担当者」に修正しましょうか、という運びになった。
そのときにサポート用資料として使ったのが以下の2つ。
Marketer Vs. Marketeer
‘Marketer’ or ‘Marketeer’? We finally have the answer!
結論から言うと、違いはよくわからない。
おもしろいのは、英語を(おそらく母語として)使う人たちが「同じでしょ」「いや違う」「こっちの方が高尚」「いや逆だ」「イギリスだけでしょ」(※今回のTED講演者はアメリカ人)などと適当なことを言い合っているところ。
さらに、”Marketeer” または”Marketer” と呼ばれるはずのマーケティングに携わっている当の本人たちも「自分は間違いなくこっちだ」というのがバラバラで、その根拠もバラバラ。
「どう呼ばれようと構わない」「どっちでもいいよ」という人もいる。
個人的には”Marketeer” の方がイマ風な雰囲気で、シリコンバレー系かな、と思う。
今は少数派でも、そのうちこっちが台頭してくるかもしれないし、その前に廃れてしまうかもしれない。
こんな感じで“親”である英語が揺れている場合、日本語のカタカナ表記はどうなっているんだろう。
日本版のシリコンバレー系企業はアメリカの動きに敏感だし、マーケティング関係者はカタカナが大好きだから、ひょっとしたら日本では一足先に「マーケティアリング部」が定着していて、とっくに「マーケティア」たちが活躍してるかも。
…と、まぁ思ってはいないけど、いちおう検索してみると「マーケティア」という日本語は今のところ、ほとんど見つからない。
このへんの鈍感さが“カタカナ語”らしさっちゃあ、らしさだよね。
「マーケティア」という語を使っている企業もあるにはあるが、「マーケティング」に紛れ込ませてこっそりと、という感じ。
ちなみに英和辞書は概ね「市場商人」という有様。
「ティア」っていう音はモテそうだし、関係者たちは新しモノ好きそうだし、他で使われていない名前を名乗りたいタイプだろうし、この語の存在が知られたら一気に流行りそうだな。
ただ、そういう感覚派の人たちのやることなので、「マーケターと何が違うんですか?」ってなったとき、いいかげんな説明をつけて広めちゃうんだろうな。
そうやってまたガラパゴスなカタカナ語が生まれるのかな。
せめてこのブログを読んでいる人は、「英語母語話者たちの間でも違いは確立していない」ということを踏まえ、「”Marketeer” と”Marketer”の違いはコレです!」と断言する人はアヤシイな、と思ってね。
リテラシー、リテラシー。