今さら、気づいたこと。
私には場所に対する思い入れがない。
モノが捨てられない人の特徴の一つに、モノに対する愛着などの思い入れが強いというのがある。
私にはそれがピンと来ないので、私とモノとの関係は「要るモノは使い、要らないモノは手放す」という至極単純なことになっている。
それと同じような感覚で、私には場所に対する思い入れがない。
私と場所との関係は「用事があれば行き、用事がなければ行かない」という至極単純なことになっている。
このことに気づいたのは最近。
それまでは何の根拠もなく“普通”だと思っていたのだろう。
モノが捨てられない人の話を聞いて、「へぇ、私はモノが捨てられるタイプだったんだ」と気づくのと同様、場所の好き嫌いを強く主張する人の話を聞いて「へぇ、私は場所にこだわりがないタイプだったんだ」と気づいた。
生まれ育った土地に執着がないのは知っていた。
幼なじみや親戚の多くは地元で教育を受け、働き、家族を作り、おそらく一生、地元を離れることがない人たち。
彼らは地元の名前がついたものに敏感で、地元の文化を愛し、地元に誇りを持っている。
私にはその感覚がわからないが、それは私と彼らのたくさんある違いの一つというだけで、場所への思い入れという括り方ができるとは考えていなかった。
そもそも私は場所を選んだことがない。
高校までは親元に、卒業以降は大学や会社などの所在地がある場所へ、いわば命じられて移動しただけのこと。
「XXに住みたいから」と場所優先で決めたことはない。
ひょんなことから今はアメリカへ飛ばされているが、これも私が望んだことではない。
合格通知の到着順が違っていたら、私は別の街に住んでいた。
旅行は、最近はめっきり行かなくなっているが、よく行っていた頃にしても、一緒に行く人が行きたいところや、友人に会うために、その人が住んでいる街へ行くという具合だった。
基本的に、旅に興味がない。
私のお出かけの目的は「人に会ってしゃべる」や「おいしいものを食べる」がメインで、あとはオマケ程度にドライブや温泉などの楽しみがあればいい。
その条件に合えば場所はどこでもいい。
ところが、多くの人はたぶんそうじゃない。
お国自慢とか郷土愛とか、憧れの国や地域とか。
「好きな街ランキング」とか。
東京と言えば「好き」とか「嫌い」とか。
ニューヨークに住んでいると言えば「うらやましい」とか。
パリに行くと言えば「苦手」とか「超楽しみ」とか。
皆の口からはそんなのがパパッと出てくる。
私は今いる街に住み始めて今年で10年目になるが、今まで一度も、この街を好き嫌いで考えたことがなかった。
で、この際だから考えてみた。
…うーん。
わからない。
良いところと良くないところがあるのは、どこでも同じでしょ。
それも季節や住環境などによって、いろいろでしょ。
おもしろいこともつまらないことも、起きるでしょ。
過去に住んだ場所を振り返ってみても、やっぱりわからない。
旅行などでほんの数日しかいなかったような場所については、なおさらわからない。
たとえば私は暑いと体が動かないので、熱帯のような場所では、滞在中ずーっとぐんにゃりしちゃってるんだろうけど、だからと言って「嫌い」にはならないと思う。
私は場所に対して好き嫌いや良し悪しを判定する機能が欠落しているのだろう。
次はどの場所とご縁ができるのかなと考えてみても、取り立ててワクワクするでもなし。
別にどこでもいいんだもん。
「決まったら教えて」って感じ。
行かなきゃいけないところならイヤでも行くんだし、行かなくていいところにはわざわざ行かない。
用事があるうちは住むし、用事がなくなったら、新しく用事のできた場所へ移動する。
そんだけ。