カタカナ語の進化

日本のテレビコマーシャルを見て思ったこと。

ある季節限定CMでは、ネイティブ発音で「Happy Valentine Day」*1
しっとりした音楽、たっぷりの高級感、世界中、特に欧米でよく知られたブランド。
このCMが世界中で流れていると思う人もいるかもしれない。

またあるCMでは、LとRのダジャレみたいな商品名を堂々と。
英語が母語で知られる日本育ちの日米ハーフの女性タレントが、絶妙の、LともRともつかない、多くの日本人の耳には英語に聞こえそうな発音を爽やかにしてみせる。

またまたあるCMでは、「Renewal Open」*2
CMは男性編、女性編の2バージョンがあり、ロケ地、BGMをそれぞれイギリスとイタリアでそろえ、出演は全員白人モデル。
ナレーションも男声、女声があるがセリフは共通。
発音は男女ともアメリカ英語風。

なるほど。
カタカナ語も着実に進化しているんだね。
たいしたもんだ。

このカタカナ語のネイティブ風進化によって、英語教育的事態は悪化すると見てまず間違いないだろう。
だって日本語とはっきりわかる音でカタカナ語が使われているうちは、それを聞く側も「ひょっとしたら英語ではないかも?」と警戒するけど、この3本のCMのように、ネイティブっぽい人、欧米風の雰囲気という見た目に、ネイティブっぽい発音でやられちゃったら、そりゃ騙されるでしょ。

日本に溢れる不思議な英語っぽい文字列を、「一度でいいからネイティブにチェックしてもらえばいいのに」なんて思っていたけど、甘かった。
カタカナ語の増強に加担するネイティブがいるんだね。
断る勇気を持ってほしかったなぁ。

CMのように、自然に何度も触れる“教材”のインパクトは強い。
目から耳から繰り返し入ってくる情報を海馬は「重要」と勘違いし、記憶は長期保存される。
また、これらのCMには匂いや味を連想させるところもあるので、シナプスをより強く結合するのに適している。
カッコいい、おしゃれ、素敵…と、情動的にも受け入れ態勢万全。
学習するなという方が無理でしょう。
放置してていいのかしら。

ものすごく限定的にしか日本のテレビと接触しない私が、ごく短期間にこれらのCMに巡り合ったわけだから、日本中で流れているCM全体の中には大量のカタカナ語が忍び込んでいるだろうと推測する。

英語教育をがんばるって言うから、てっきりカタカナ語は撲滅、排除、訂正の方向へ向かうのかと思ってたのに。
むしろ隠蔽、混入、巧妙化の方向ですか。
あーあ。

こうしてカタカナ語はますます蔓延し、日本語の中に溶け込むこともなくギラギラと水面に浮かぶ。
英語教育においては、たとえ英語として成立していなくても、英語っぽく聞こえさえすればいいという軽薄な文化が、きちんとした英語の使い手を育てる土壌を痩せさせる。
日本語の海は守られず、英語の森の木は枯れていく。
あーあ。

やる気なくなるわぁ。
なんでこれがカッコ良く見えるのかねぇ。
バカにされてるんだよ?

*1. 英語としては”Happy Valentine’s Day”
*2. 英語としては…うーん。”Grand reopening after renovation”?? 説明ならわかるけど、宣伝ではおかしいよね。そもそも「リニューアル」を強調したい感覚が理解できない。

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