「言語コーチング」のセッション

コラム最終回の今回は、「言語コーチング」についてご紹介します。

言語教育にコーチングを取り入れた「言語コーチング」には、2013年から国際コーチ連盟の認定資格ができました。
資格を持った言語コーチは現在世界各地に45名ほどいますが、私はその中のアジア人第一号です。

Coaching (コーチング)はTeaching (教えること)に対抗するものとして、Teaching への脅威ととらえられることがありますが、決してそうではありません。
言語コーチはみな、言語教育の経験者であり、従来型の教育(教師が一方的に知識を伝授する、教科書どおりに授業を進める、など)の有効性や手法を理解していることが義務付けられています。
そのうえで、従来型の教育では難しかった事柄を、コーチングの持つ「双方向性」「現在進行型」「個別対応」などの特徴を利用して実現しようとしています。
一人ひとりの学習者にピッタリあった学習法を提供し、効率良く学習が進むようにしています。

コーチは学習者とゴールを共有し、二人三脚で進みます。
しかし、学習の主役は学習者です。
コーチは学習者の動機や目標、職業、興味、趣味、ライフスタイルなどに沿って学習をサポートし、学習者の反応や脳の状態を見ながら、学習意欲を高く保てるよう様々な働きかけをします。
よく受講生に「そこまでやってくれるんですか」と驚かれますが、コーチのゴールは学習者にゴールを達成してもらうことですから、そのためにコーチが尽力するのは当然です。

言語コーチングのセッションは目標言語(例:英語学習なら英語)で行われるのが一般的ですが、私は日本語で行っています。
セッションは目標言語を練習する場ではなく、学習者が自らの学習プロセスについて考える場だということを明確にするためです。
学習者の母語でセッションを行うことにより、コーチは学習者の抱える悩みやもどかしさを素早く的確に汲み取ることができます。
その情報に基づいた働きかけをすれば、学習者の「目からウロコ」体験は起きやすくなります。
また、対話を通じてコーチが受講生の母語でのコミュニケーションの特徴を観察できるのも大きな利点だと考えています。

コーチングを経て、受講生が自分で自分の力を伸ばす方法を見つけ、学習の習慣をつけて、自立した学習者としてコーチの元を巣立っていく。
その姿を見送ることが、私たち言語コーチの何よりの喜びです。

(US Weekly Biz 2014年10月2日号掲載)

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