文法は“読み書きのため”と思っていませんか?
文法学習には本を使ったり、例文を板書して分解したりする方法が一般的なので、そんなイメージがついているかもしれません。
しかし実は、相手の言っていることを聞き取ったり、自分の言いたいことを伝えたりする時にも、文法は重要な役目を果たしています。
このコラムの第6回で挙げた聞き取れない理由の一つに、「文法が理解できていない」がありました。
コーチングの中で、受講生の文法力がはっきりと現れるのは文字起こしです。
たとえば、「Does he have any kids?」 と聞かれているのに、「Does he how many kids?」と書き起こしていれば、この受講生は基本的な動詞について復習する必要があるとわかります。
自分でそれに気づき、復習をし、理解できれば「Does he have any kids?」がそのまま聞こえるようになり、聞こえれば、当然それに対する返事も変わってきます。
一方、文字起こしをしたときに、前置詞(on, in, at, with など)や、冠詞(a, the など)、単数・複数の使い分けなどの細かいところまで聞き取れている受講生は、相手の発話をきちんと理解しており、受け答えが的外れになることはありません。
受講生の発話に対して相手もよく理解しています。
文法という言語の骨組みが正しければ、たとえその中に誤解が生じても、お互いに問題を特定しやすいため、相手と協力して修正や補足を加え、早く本来の意味する内容に辿り着くことができます。
「ネイティブは文法なんて気にしない」という声を時々耳にします。
しかし、それはかなり語弊があります。
私たちにとっての日本語を考えてみても、母語話者というのは文法を気にしながら話すことはあまりありませんし、特別に勉強しない限り、自分の使っている言語を文法的に説明することはできないでしょう。
それでもほとんどの場合、母語話者は文法という社会的なルールに自然に則っています。
ルールを共有しているからこそ、通常の言語コミュニケーションはスムーズに効率よく行われ、時にはわざとルールを外してジョークを生んだりできるわけです。
文法学習といっても、いきなり分厚い文法書を最初から全部やる必要はありません。
自分にとって、どの文法項目が、どんな場面で、なぜ必要か納得してから学習に臨むのが効果的です。
(US Weekly Biz 2014年7月3日号掲載)