集中してやることの実験と、その結果。
今日の記事は読んだ人の反応が
1. 共感型:「あーわかる」「あるある」
2. 驚き型:「へーすごい」「そうなんだー」
3. 不審・理解不能型:「気色悪っ」「わけわからん」
の3つに分かれそうだな。
職業柄、集中することの大切さを説明する機会が多い。
100ページの本を100日かけて読むのと、数日のうちに一気に読むのとでは、特に要点や全体像をつかむという意味で効果が異なる。
英語の学習もそう。
私は飛行機と滑走路を例にとり、滑走路をダラダラ走るような飛行機は何年待っても絶対に飛び立てない、というようなことを話す。
速く雑にやるのではなく、ただ長くダラダラやるのでもなく、短期間にクッと集中してやることによってしか味わえない感覚、
それによって開ける新しい物の見方を、ぜひ学習者には体験してほしいと思っている。
研究者というのはだいたいそういう感覚を知っていて、だからこそ1秒先も見えない状態で何日も何ヶ月ももがき続けることができるのだけど、いかんせん研究というものは一般には馴染みがない。
特殊な人が集まる特殊な世界であるという事実も否めない。
私が体験談として語れることで、一般に伝わりやすいエピソードはないかな。
そこで、日本人の間で知名度も人気も高まりつつあるTEDを使って、エピソードを作ってみることにした。
ドMの私は割と日常的にそういうことをやって楽しんでいるが、ホームメイドの人体実験の一環である。
というわけで、この2週間ほど集中して、しばらく遠ざかっていた字幕翻訳をまとめてやってみた。
集中力の持ちは日によっても内容によっても違うので、“毎日X時間”みたいなのはよくわからないが、まぁ、どうかな、1ラウンドあたり2-5時間ぐらい?
聞いて、見て、読んで、訳して、書いて、直して、聞きながら直して…という作業を黙々と続けた。
するとどうでしょう。
途中のどこかから、作業の手順というか方法が変わってきた。
どこがどう変わったんだろうと思って、自分のやっていることを観察してみると、上述のステップのうちのいくつかが要らなくなっているようだった。
どういうことだろうと考えてみると、どうやら私の頭の中では講演者が日本語でトークを披露しており、私はそれを書き取っているだけのようだった。
レシピ風にいうなら、こういうこと。
①ビデオを見ながら、内容を理解する。このときの言語は英語。
②理解した内容を言語とは無関係の場所に移して、よく揉んで咀嚼し、圧縮していったん保存する。一晩寝かせてもよい。
③②を日本語で解凍し、講演者の声で再生する。
④③を文字化する。
できあがった訳は、講演者の口調に合っているし、タイミングもばっちり。
字幕特有の文字制限も、ほぼ問題にならない。
思わず「巧い!」と言いたくなるような言葉のチョイスがごく自然に入ってくる。
そりゃ講演者本人が日本語でしゃべってるんだから、当たり前なのさ。
このやり方だと字幕翻訳はあっという間にできあがる。
15-20分のトークが、1-2日で完成。
ラックチーン。
集中してコツを掴んで、新鮮な感覚を体験して、飛び立っていくって、こういうことだよ。
で、さて。
これ、一般の人に伝わるのかな?
うーむ。