Hallmark のショップにて。
カードを選んでいたら、レジの方から男性の声が聞こえてきた。
「母の日のカードを買いたいので、手伝ってほしい」。
やがてその男性と店員が私のいる棚へやってきた。
見ると、男性は目が不自由。
なるほど、それで店員の助けが要るわけか。
最初のリクエストは「音楽の鳴るカード」だったのだが、あいにく母の日のカードで音楽付きはないらしい。
なるほど、音楽付きカードなら視覚障害者も、自分で内容を確認して送ることができるもんね。
そういう需要もあるのかぁ。
それでは、というわけで、店員がいくつか見繕って、カードのメッセージを読み上げることになった。
「あぁ、いいね。候補に入れておこう。他には?」という感じで、男性はじっくりと選ぶ。
店員の若い女性からしたら、男性は父親くらいの年代だろう。
いい娘さんだなぁ。
カードを選びながら、雑談も始まった。
男性は店内のBGMに反応してジャクソン5の思い出を語ったり、店員の大学や専攻について尋ねたり。
それに受け答えしつつ、店員はカードを選んでは読み上げ、ようやくベストな1枚が決まった。
男性は店員と一緒にレジに戻り、会計を済ませると、店員に封筒の宛名を書くよう頼んだ。
男性がお母さんの名前と住所を暗唱し、店員が書く。
その頃には、私を含む会計待ちの客がレジ近くに集まってきていた。
お互いに目で会話しつつ、わざと少し遠巻きにして、商品を見るフリをしながら待つ。
ここには男性のすぐ後ろに並んで咳払いや舌打ちをしたり、イライラして店員に文句を言ったりする客はいない。
やがて別の店員が奥から出てきて、レジに立った。
私もお会計。
“Thank you for your patience.”
そうなんだよね。
これは”Sorry” と言うべき場面じゃない。
せかせかするより大事なことが、世の中にはたくさんある。