いただきものの美容マスクのパッケージから、日本の英語のことを考える。
This is a mask for your beauty that includes sufficiently
coenzyme Q10, collagen, hyaluronic acids and others.
It infiltrates into your skin and makes moisturized.
…まぁね。
私は日本の公共交通機関やホテルなど、英語を必要とする外国人が実際に訪れる機会があるような場所に、案内のために表示されている英語には寛大。
つたないものは、もちろん気にはなるし、目はテンになるし、つい立ち止まってしまうけど、「これでもないよりはマシかぁ」と思うようにしている。
全力でがんばって、何か伝えようとしているのだから、その涙ぐましい努力を認め、見逃してあげようと思う。
もし、日本に来た外国人の身に何か困ったことが起き、それが人通りのほとんどないような場所だったら、誰でもいいから最初に通りかかった人に助けを求めるだろう。
その人の英語が流暢であるという可能性はとても低いし、外国人側もそんな期待は初めからしていない。
最悪、Yes/Noだけでも通じればいい。
指差しでもボディランゲージでも、何かしらのヒントになる。
英語の通じない国で、英語らしき張り紙がしてあったら、たとえ“目がテン”になろうとも、それなりに役に立つのだろうと思う。
ただ、今回の美容マスクのような商品に付いている英語は、何の意味があるのか、さっぱりわからない。
英語が“見えない”人には見えないのだから、ないのと同じ。
英語が“見える”人にとっては、英語として読んだところで、「…で?」となるだけだから意味がない。
仮にこの英語の部分を読んで商品を使ってみようと思った人がいたとしても、パッケージの裏側に細かい字で載っている『ご使用方法』や『ご使用上の注意』はすべて日本語。
英語話者をターゲットに取り込もうという意図はないのだ。
この“英語”は誰に向けて書かれているのだろうか。
おそらくは、アルファベット好きで言語学習に縁のない人たち向け。
彼らは言語としての英語は“見えない”が、英語らしき文字列があると「カッコいい」「おしゃれ」と感じる。
彼らにとって、この文字列は模様以上の効果がある。
なにしろ、書かれている内容はわからなくても、あるいはわからないからこそ、商品に対し、なんとなく高級感や安心感を持つことができるのだ。
英語がわかる人にとっては、見かけ倒し。
わからない人にとっては、付加価値。
そういう不思議なゾーンに属する英語がある。
最近、日本のあるゼリー飲料のパッケージが新しくなった。
その新パッケージからはとうとう日本語が排除された。
間違いなく、日本の、日本人向けの商品なのだが、大人の事情でどうしても外せないらしい果汁などの表示以外、デザイン的には全部、英語。
大きな広告をいくつも生み出した超一流の有名デザイナーが手がけたものだそうだ。
5種類あるゼリー飲料のパッケージの文言は統一されている。
その“英語”は、美容マスクと同じような感じ。
「…まぁね」としか言いようのない、不思議な英語だ。
これが現代日本の、最新の、“新しいスタイリッシュ感”なんだってさ。
こういう英語を何とかしようとは、もうまったく思わない。
だって2014年の“グローバル”なこの時代に、まだこんなに根強い人気を誇ってるんだから。
無理、無理。
ご自由にどうぞ。
私にできることは、草の根運動をコツコツやって、こういう英語に違和感を覚える日本人を少しずつ増やすこと。
不思議な英語の気持ち悪さやカッコ悪さをちゃんと感じられる人を一人でも多く育てること。
いや、これだってかなり壮大な野望だよ。
問題のゼリー飲料、すぐに突き止められて、画像で確認できました。
(いやはや… としか言いようがないというか、大したものですね)
最大の問題セクターは、デザイン関係の人なのかもしれませんね。
要するに 「テキストに酷似した見かけのグラフィック・デザイン (模様)」 だから、もっともらしけりゃいいわけだ。
本当に。「とほほ」ですよね。