辺境ラジオ

『辺境ラジオ 年の瀬公開対話篇』(参照)を聞いて、メモ。

『辺境ラジオ』は、“森羅万象を照射し続ける知の伝道師”内田樹さん、“奈良が生んだ愛と癒しの精神科医”名越康文さん、MBSアナウンサー西靖さんが、アメリカ、中国ではなく日本の、東京ではなく関西の、テレビではなくラジオの、つまり中心ではなく辺境からこそ見える物事の本質を“健全なるおやじ視線”で語る番組(番組冒頭の紹介より)。

遅ればせながら、ポッドキャストから年末に放送された回(参照)を聞いた。

以下、「覚えとこ」と思ってとったメモと感想。

・結着剤
「結着剤使用の始まりは、修学旅行の夕食。全員に同じ大きさのおかずを出せという要求に応えようとした。」
ネット検索で裏付けを取ることはできなかったが、都市伝説だとしても、いかにも日本的でおもしろい。

・テレビと政治
「立派な考えを持ったよく知らない人より、たいしたことなくてもテレビでよく見る人の方が安心。ただ、露出と評価は反比例に向かいつつある。」
うーん、どうかなぁ。
テレビはよくわからないけど、発信チャネルが増え、速度が上がり、メディア全体が簡単に出られるものになったので、確かに出たがりを嫌う傾向は強まっていくかもしれない。
でも接触頻度と親和性の関係はなくならないからなぁ。
露出が高く、思考停止へ誘導するテクニックを備えていれば、やっぱり選挙には勝てちゃう気がする。

・感情という判断基準
「宗教のない日本人は、感情を軸に判断せざるを得ない。そして自分が感情的な判断をしていることに気づかない。」
なるほど。
だから議論がケンカになるんだよね。

・悶々感
「大規模な変革に必要なのはポジティブな理想ではない。イヤな感じ、気持ち悪さ、なんかヘン、もう無理というネガティブな感覚、身体的リアリティを共有することが大事。」
うん、うん。
ポジティブを求めてる人なんて、本当はそんなに多くないから。

・トラウマ
「感情的な批判をする人は、不満や寂しさなど過去の経験を目の前の状況に投影して復讐しようとしている。怒りが訳のわからない情熱となり、冷めることなく恨みに変わる。」
わーかーるー。
その時々にちゃんと解消してきていないから、縺れて、溜まって、的外れな怒りになるのよね。
出しそびれた怒りなんて忘れちゃえばいいのに。

・株式会社化
「政治や教育を株式会社化して、方針決定する速度を上げ、効率的に金儲けをしようとする思想。良い方針より良い組織が優先される社会。」
速さを追求するだけで、もれなく物事や思考の単純化が進み、圧力や隠蔽が機能し、盲目的に従うことが良いとされるわけだ。
本当にうまいことできてる。

・大学入試改革
大学教員によるリクルート制度は、ま、選ぶ側がちゃんとしてるならいいでしょうね。
私が博士課程に進むことになったのは、師匠の独断と偏見以外のなにものでもない。
彼の目に狂いがあったような気は、いまだにするけど。

・日本版スティーブジョブズ
「ジョブズみたいなヤツが日本の大学に来るわけない。イノベーター養成コースはそれ自体が論理矛盾。」
わはは。
サボり方を習う講座に皆勤賞、とか、浪費癖を止めるために大金をつぎこむ、とかね。
イヤ、素直で真面目なのは悪いことじゃない。
でも何事にも適性というか、向き不向きがあるからさ。
日本の大学でジョブズが養成できたら、そのことが超特大のイノベーション。

・反教養主義、反知性主義
「バカでいい、勉強は楽しくないという刷り込み。」
この刷り込みのパワー、浸透力、支持率はすごいよね。
効果も覿面。感心する。

・透明感のある若者たち
そうね、そういう人たちも増えてきている。
ただ、その劣化版みたいな、ただのnaive*なロマンチストはどうしたものかなと思う。
*naïve = 考えの甘い、愚直な、世間知らずの、底の浅い、批判的能力に欠ける

「辺境ラジオ」への2件のフィードバック

  1. カタカナ言葉の文脈だと 「ナイーブなロマンチスト」 は、かなりポイントの高い褒め言葉だったりするので、「透明感のある若者」 になりたがるのは無理もないかもしれません。

  2. あぁ、うっかりしていました。誤解を減らすべく(「なくす」のは不可能でしょうから)、表記を変えて無粋な補足をしておきます。ご指摘ありがとうございました。

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