教育と商売について。
コーチング研修もそろそろ大詰め。
初回セッションの内容を細かく学び、各項目の実習をみっちり積んできた。
研修において初回をがっつりやる理由は、初回セッションというのが唯一“型”に沿っていくことができるものだからだ。
「コーチングとは何ぞや」という説明をし、受講生の動機を聞き、現時点のレベルと課題を把握して、ゴールと短期目標、具体的な行動計画を設定する。
そこから先は、受講生の目標や個性、課題の内容や進捗、受講生の変化などに応じて決めていく。
受講生が目標に近づいていきさえすれば、セッションはどの方向へ進んでも構わない。
…というところまで来て、Zから、「どのくらい先までの予定を組むのが適切か」という質問が出た。
5回、10回ごと、あるいは月に一度、というように、区切りなり終わりなりを決めた方が、目標も立てやすいし、変化に応じて調整もしやすい。
講師のRは”It depends.(状況次第、時と場合による)”と前置きして、「3ヶ月、つまり週1だったら12回ぐらいのセッションを目安に全体と考えて、その中でいくつか区切りをつけるのがいいんじゃないかと思う」と言った。
もちろん予定より早く目標に達した場合は短く切り上げればいい。
「ただし」。
Rは「これはあくまでも私の持論だけど」ともう一つ前置きして、「3ヶ月以上のコーチングは、ただの引き伸ばしになると思う」と言った。
「商売としては受講生がいつまでも続けてくれることが良くて、短い期間で辞めてしまうのは良くないのかもしれない。
実際、多くの学校ではそうやって生徒を引き止めることによって商売を成り立たせている。
でも私は、そのやり方では、受講生の目標達成をサポートするという、本来のコーチングの目的から外れていってしまうと思う」。
「3ヶ月やってみて、受講生が『まだ続けたい』と言ったら、なぜ続けたいかを聞いて、その理由によってはコーチングを続けることがないわけではない。
たとえば、就職のために英語力を伸ばす必要のあった人がコーチングを受けて見事就職できたけれど、今度は職場で使う英語を学ぶ必要が出てきた、とかね。
その場合は当初の目標とは別の目標を新たに立てて、コーチングを再スタートさせるということになると思う。
でも、そうでなければ、きちんと終わりにした方が良いというのが、私の考え」。
まったくもって大賛成。
私のやっているコーチングでは3ヶ月を標準受講期間として、できるだけ早く“卒業”するよう促している。
諸事情により延長する場合は+3ヶ月までは許すが、スタートから6ヶ月以上の受講は受け付けていない。
いつまでもコーチに頼って、ただ惰性でコーチングを受けていても意味がないし、受講中にきちんと自立して学習できるようになれば、「コーチがいなくても大丈夫」と、学習者の方から自然と離れていくだろう、と考えるからだ。
英会話学校に何年も通い、それが趣味となって、そこにかける時間や費用を惜しまない人をたくさん見てきた。
それはそれで構わない。
でも私は趣味の場を提供するつもりはない。
提供したいのは学習の場。
そこに立ち寄った人には、さっさと学習方法を身につけて、とっとと一人前になって、「あとは勝手にやるからもういいよ」と、去っていってもらわなければ困る。
「もっとうまくやれば、もっと儲かるのに」と何度言われたことか。
「受講生を追い出すなんて冷たい」と何度言われたことか。
でも私には、エサを小出しにしながら、いつまでもお客を引き止めている商売を“教育”と呼ぶことはできないし、情に溺れて共依存状態に陥ることを良いと思わない。
同じ考えの人が実在したんだとわかり、その人に出会えたことが、本当にうれしい。