『素直』

『素直』を英語でどう言うか、考えてみた。
うーん。

日本人の友人に言われて気づいた。
『素直』って英語にならないんだね。

友人は名前の意味を説明するときに『素直』を使いたいのだが、日本語の『素直』が持つ良い意味をそなえた訳語がなくて、いつも困るのだと言う。

なるほど。
確かに’obedient’ ‘amenable’ ‘compliant’ あたりだと、従順なイメージと同時に「御しやすい」ところがあって、’easy’ ‘silly’ ‘meek’ ‘passive’ ‘submissive’ を連想させる。
「手なずけやすい」って、良い意味じゃないよね。

‘straightforward’ ‘up-front’ ‘direct’ ‘frank’ だと、「直球」、「率直」のまっすぐさは出るけど、『素直』よりもズケズケ、ズバズバした感じになる。

‘amiable’ だと’social’ ‘cheerful’ に近くなって、『素直』の持つ、ほわっとした内面的な良さを表せない。

‘earnest’ ‘honest’ ‘truthful’ は、まぁ悪くないんだけど、『素直』というより、「実直」になっちゃいそうだよね。
名前にするなら「誠」とか「真」とか、かな。
『素直』と「嘘がない」は別物だよねぇ。

うーん。
そう言われてみると、たとえばアメリカで、『素直』を良いものとして捉える場面が思いつかない。
親の言うことを聞く子って、日本ほど評価が高くないし。
感情を抑えて褒められることはあっても、そのまま出すのは、まぁ当たり前だから、別に褒められないし。
対照的に、日本語の『素直』は紛れもなく良い意味で、だからこそ名前に使ったりするのだ。
こんなところにも、根深い文化の違いがあったんだね。

そもそも、『素直』ってどういう意味なんだろう。
以下、毎度おなじみ広辞苑。

す-なお【素直】
①飾り気なくありのままなこと。曲がったり癖があったりしないさま。質朴。淳朴。
②心の正しいこと。正直。
③おだやかで人にさからわないこと。従順。柔和。
④物事がすんなりゆくこと。とどこおりないさま。
⑤技芸などで、癖がなく、すっきりしていること。

うーん、そうか。
守備範囲が広いんだね。
それで、英語にしようとするととっ散らかっちゃうんだな。
語釈を訳してみると、上に挙げた語に加えて、さらに、’simple’ ‘innocent’ ‘pure’ ‘right’ ‘fair’ ‘smooth’ ‘bland’ ‘clear’などなど、どんどん膨らんでいく。

ま、これは「『素直』を一語に訳すのは無理」ってことでしょうな。

英語には逆に、『素直じゃない』というような意味で、’defiant’ ‘devious’ があるので、これらに’not’ を付けて、『素直じゃなくない』にするのはアリかも。
あとはもう説明っぽくなっちゃうけど、”mild and good in nature” ぐらいで、どうでしょう。
うーん。

[追記]こういう英訳もあるらしい。なるほど。(参照1 参照2

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。