『村おこし』、始まる。
コミュニティデザインという仕事がある。
あるコミュニティの中で、そこに住む人たち同士をつなぎ、そのつながりから生まれる力を利用してまちの姿を変えていく、というようなもの。
私がこれに興味を持ったのは、復興支援や寺子屋的な教育の場の提供について、アイディアを具現化する方法を探していたときのこと。
「ヨソモノが急に入ってきて、住民たちを巻き込み、動かす」ということが実現可能なのだとわかって感動を覚えた。
そして、デザイナーはある地点までは先導するが、ムーブメントが軌道に乗ったら手を離し、その後は当事者たちの力を信頼して遠くから見守るという姿勢が、私がコーチとしてやっていることと一致していたので強く印象に残った。
で、まぁ折に触れその辺の情報を集めたりしていたのだが、ふと、このコミュニティデザイン的アプローチは、私がヨソモノ役をやるという切り口だけではなく、私自身のやっていることにも応用できるのではないかと考えた。
コミュニティデザインでは、早い段階で、その土地の人たちが「平凡で価値がない」と思いこんでいるような“隠れアイテム”を見つけ出し、「ヨソモノの目から見ると、これ、おもしろいですよ」と指摘する。
思いもよらない指摘に土地の人たちは「えぇ、こんなものが?」と驚くが、「そうか、それならやってみようか」という気になってくる。
そのやる気が原動力となって、コミュニティ全体が動き始めるのだ。
ふむ。
私が思いつき、作り、提供している英会話コーチングを、ヨソモノに見てもらうとどうなるかな。
『村おこし』的な、何かおもしろいことが起きるかな。
というわけで、私の“村”へ来て、ヨソモノ役をやってくれる人を探しはじめた。
ところがこれが難しい。
デザイナーを名乗る人は星の数ほどいるのにね。
すぐに了解しちゃう人、集客や金儲けの話と勘違いしちゃう人、ブランディングとかいう用語を振りかざし、その定義は「安物を高級そうに仕立てて消費者を欺くこと」だと思ってる人、など。
言葉が通じなすぎて、もう嫌になってきて、やめようかなと思った頃、Sさんに出会った。
Sさんはファーストコンタクトから他とは違っていたが、話が進むにつれ、“キタ感”がどんどん高まってきた。
3度目にお会いしたとき、Sさんが投げかけてくれる質問に私が普通に答えると、「それ、なんで使わないんですか。出しましょうよ」とSさんが反応し、私が「おぉ、これをですか」と驚く、ということが起きてきた。
「掘れば掘るほどお宝が出てくるみたいで楽しい」とSさんに言われたので、私は意を決して「実はこのプロジェクト、『村おこし』のようなイメージなんです」と打ち明けた。
この意味が伝わらなければ、ヨソモノ役をお願いすることはできない。
Sさんの返事は「あぁ、なるほど。いいですね、やりましょう!」。
こうして商談は成立したのだった。
私もSさんも、これから何がどうなって、どんなものができて、それがどう動くのか、何もわからないが、とにかくワクワクしている。