言葉って、伝わらない。
「もっとわがままになっていい」と聞いて、思いやりのない人が自分勝手になった。
「自分らしく」と聞いて、内省できない人が路頭に迷うようになった。
「流れに身を任せて」と聞いて、決断できない人が責任を放棄するようになった。
「無理しないで」と聞いて、我慢をしたことのない人が楽を選ぶようになった。
「人それぞれ」と聞いて、自分と似た人を求めてさまよう人が増えた。
「今を大切に」と聞いて、過去を顧みたり、将来を考えたりする余裕が失われた。
言葉は通じない。
それはもう、絶望的に通じない。
それでも私たちは言葉をつかう。
「幸せに」「幸せに」と言いながら、人はどこへ向かっているのだろうか。