『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』を読んだ。
1987年に書かれた本の復刻版。
25年、四半世紀前の作品だ。
私は経済のことはわからない。
だからこの本に書かれている内容はほとんど理解できていない。
でも、とてもおもしろかった。
日本の強さと美しさに絶大なる信頼をおき、だからこそ、アメリカに媚びへつらう姿に苛立つ。
「後ろめたさ」(p.68)や「後遺症」(p.207)などを認めつつ、だからといってアメリカに従うことはないと叱責する。
『パックス・アメリカーナ』、『アメリカ=世界経済』というアメリカの「思い上がった精神」(p.112)、「迷信」(p.191)と決別し、おかしな論理にごまかされないように、よく考えろ、と忠告する。
「せっかく豊かになったのだから」と、それにしがみつき、無理を重ねるのではなく、多少の苦痛を伴っても、広い視野をもって、マイナス成長という現実をきちんと受け入れようと促す。
「国民をどう生きさせるか」という「国民経済」(p.92)の視点を失ってはならないと教える。
そのうえで、生身の人間を想定せずに経済を語る専門家たちを痛烈に批判する(pp.108-9)。
アメリカは放っておけ、日本への干渉を許すなと警告する。
胸のすく思いがした。
経済をやる人はアメリカ教の信者が多い。
その多くは実際にアメリカへ渡り、高等な教育を受けた上で、じゅうぶん信仰を深めて日本へ“最先端技術”を持ち帰る。
経済の知識があっても、アメリカに住んでも、アメリカの実情はぜんぜん見ないで、「素晴らしい国だ」という幻想に取り憑かれ、目がハート状態のまま、新しいマネーゲームのルールと裏技を覚えて凱旋帰国する。
「アメリカ帰り」「本場仕込み」とちやほやされて、偉くなる。
そこには冷静で論理的な分析など必要ない。
でも、そうじゃない人もいるんだね。
そうでなければこの本が復刊され、高い評価を得ているはずがない。
『解説』というタイトルのあとがきによると、「日本はどうやって生きていけばいいのか」との問いに、著者はこう答えたという。
「これからの日本は江戸時代のような姿になるのがいい。文化とか芸術とか教養に力を入れる時代になるべきだ」(p.219)。
下村治. (2009). 日本は悪くない:悪いのはアメリカだ. 文藝春秋.