最近知り合った、とても素敵な若いご夫婦のこと。
※思いがけず夫婦ネタが続くことになってしまったが、これは昨日のが急に割り込んできたせい。
奥様のSさんとは去年あるパーティーで会い、私がPhDをやっているというところから「うちの主人も!」となり「ぜひ紹介したい」となっていた。
が、残念ながらそのパーティーでは、ご主人のKさんとお話しするチャンスはなかった。
それから4ヵ月後。
イベントでSさんKさんとご一緒する機会があり、特に打ち上げ会場であるレストランまでの移動時間を使ってゆっくりお話しすることができた。
Kさんは日本のT大学からC大学へ進み、縁の向くまま専門を柔軟に変えて、数年前からガン研究に落ち着いたという経歴の持ち主。
いかにも優秀な方で、キレが良いのも素晴らしいが、それ以上に、はっきりとした口調と社交的な人柄が印象的。
相手の話に興味を持って、丁寧に聞く人だなぁと思っていたら、コミュニケーションの話題になったときに聴くスキルについて自論を展開された。
素晴らしい。
やはり、頭のいい人は理解してそれを実行できてるんだね。
ガンは辞めて一緒に英語教育やりませんか、と、ついスカウトしそうになっちゃうよ。
奥様のSさんは、聡明で行動力があって、テキパキと仕事しそうな、いわゆるデキる女。
実際、日本ではキャリアウーマンだったようだが、ご主人の留学についてアメリカへ渡ってこられた。
で、ここでも仕事を見つけて、趣味を通じてお友達を増やし、不規則になりがちな研究者の生活を支えながら、ご自身の生活をもエンジョイしている。
こんなバランスの良いさっぱりとした仲良しカップルは、ありそうでなかなかない。
到着したレストランはずいぶん混んでいた。
予約はされていても、全員そろうまで席に案内されないのはNYCではよくあること。
イベントで立ちっぱなしだったのと、レストランまでの徒歩移動で疲れていたのでKさんが交渉してくれたが、ダメだった。
するとSさんが「私が言ってくる」と再交渉に行った。
Kさんによると「いつもこうなんです」。
「僕もそこそこ言うんですけど、彼女から見ると足りないらしく、『もっと言わなきゃ!』と言われるんです」。
留学や駐在に付いて渡米する奥様の中には、英語ができなかったり、異文化になじめなかったりで、「ソトのことはご主人に任せっきり」という人も多い。
“連れてこられた”ことを楯にワガママになる人もいる。
にぎやかな店内の奥で粘り強く交渉するSさんを眺めながら、「しっかりと独立した奥様で助かりますね」と言うと、「本当、その点は感謝してます」とKさん。
そして、Sさんの交渉は見事成立。
私たち3人だけ先に席へ通してもらうことができた。
Sさんは私の研究にも興味を持ってくださっており、ウェブサイトなどの内容をKさんに説明するときも「すごくおもしろそうなんだよ」と紹介してくださる。
前例がなく、一般に伝わりにくいことをやる者にとって、その一言は何よりも励みになる。
研究者というのはマニアックでオタクなものだから、理解されないことや誤解されることには慣れている。
でも、興味を持たれない寂しさに慣れることはない。
よくわからなくても、おもしろがって聞いてもらい、「応援してます」と言われると、ものすごくうれしい。
Sさんは研究者の妻の鑑だ。
「Kさんがうらやましい。私もこんな嫁がほしい」と、お世辞ではなく、本心から言った。
人という字は支え合ってなどいない。
ひとりが大地に足を踏ん張って立っている。
自立した者同士でなければ支え合うことなど絶対にできない。