『オバマの言語感覚』

このタイミングで。
『オバマの言語感覚』読書感想文。

アマゾンのリマインダー機能によると、私はこの本を出版年である2009年に買ったらしい。
おそらく日経ビジネスに紹介されていたのがきっかけ。
その時の感想はここに書き残してある。

で、最近になって読み返した。
2009年当時よりいくらかディスコースのことを知っているので、改めておもしろく読めた。

私のいる分野の研究では、世の中がひっくり返るような世紀の大発見は生まれない。
一般の人が普通に考えて、当たり前だと思うことを、懇切丁寧に紐解く、ということに価値が置かれている。

たとえば人間の赤ちゃんは生まれてしばらく言語を発しない、とか、第二言語学習者は頭の中で翻訳をすることがある、とか、「窓を閉めろ」の代わりに「ちょっと寒いね」で事足りる、とか、誰もが「そりゃそうでしょ」と思うようなことを大真面目に議論し、たっぷりと時間をかけて研究する。
修士の1年生は最初の学期に、「素人でも知っている、こんな当たり前のことなのに、生涯かけて研究してる人がいるんだ」と驚かされる。
で、「モノが落ちることを皆が知っている状況の中で、万有引力は“発見”されたでしょう?」と諭される。

ことば選び一つで、伝わり方が変わる。
そんなこと、世界中の誰でも日常的に体験している。
この本で紹介されている内容は、専門外の人が見れば「常識」であり、「わざわざ調べなくてもわかりきっていること」かもしれない。
ところが内側の人にとっては、それこそが“発見”。
ワクワクするほど刺激的なサイエンスなのだ。
この温度差、伝わるかなぁ。

著者はアメリカの教育を受け、アメリカで教壇に立っている方なので、アメリカの研究論文に慣れている私にはとても読みやすかった。
全体として日本よりアメリカの評価が高いようだが、まぁアメリカの言語を専門的に研究するような人なら、それが普通なんでしょうね。

ところで今日のState of the Union(一般教書演説)は、一人称単数(I, my, me) だらけだったね。
「俺に任せとけ」「ついてこい」「どこへも行くな」という強いメッセージを前面に出した演説になっていた。
アメリカ人のことを’they’ にしているところもあったし。
この演説を就任演説と比較するとまたおもしろい発見がありそう。

大統領選挙後に続編が出るかな?

東照二. (2009). オバマの言語感覚:人を動かすことば. NHK出版.

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