『未曾有と想定外』

未曾有と想定外』を読んだ。

副題は『東日本大震災に学ぶ』。
タイミングを重視して素早く発表されてはいるが、それでいて考察はきわめて深く、緻密。
丁寧な語り口ときっぱりとした苦言。
いろんな意味でバランスの良い本だと思う。

一人ひとりが「自分で判断する」ということの大切さについては、震災直後、痛切に感じたし(参照)、これから先もずっと意識的に養っていかなくてはいけないと確信しているが、著者のように影響力のある方がこうして強調してくれると、なんだか賛同を得たような気分になってうれしい。

偶然にも私たちJERAの活動を釜石市の中学生に紹介したいというオファーをいただいたところで、先方とやりとりをする間にこの本を読んでいて、釜石市の小中学生の生存率が99.8%だったことを知った(p. 51)。
被災教育ともいえる取り組みが実際に功を奏したという大変良い例なので、こうした啓蒙活動をアメリカで紹介してはどうかと逆オファーしておいた。

根幹にある『失敗学』をはじめ、全体を通して畑村氏の主張はいかにも正しい。
しかし正しいことが正しく機能すれば苦労はないわけで。
その意味では、わかっちゃいるけどどうしようもないという、人間の弱さや葛藤を浮き彫りにした作品として読むこともできる。

そして、最大の“教え”は、避けては通れないことから目を背けないようにすること。
そのうえで、対抗しないで、いなす。すかす。
闘わないで、折り合う。
これが大事なのは、何も災害に限ったことではない。
完璧主義に陥って、重箱の隅をつつき合い、少しでもうまくいかないことがあるとすべてを投げ出し、なんでもすぐ白紙に戻したがる現代人にとって、「いなす・すかす・折り合う」は、日々の生活の中から心がけるべき発想の転換だと思う。

たとえ部分的に壊れても、全体を守り、生かし続けていく。
うん、結局は「生かし続ける」ということに尽きるんだろうな。

畑村 洋太郎 (2011). 未曾有と想定外:東日本大震災に学ぶ. 講談社.

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