久しぶりに日英バイリンガルの子と遊んだ。
観察…するつもりはなかったんだけど、メモ。
観察対象となったのはH。4歳2ヶ月。
2歳4ヶ月のときに渡米。在米歴1年10ヶ月。
両親とも日本人で家庭では日本語を使用。
幼稚園での使用言語は英語。
①Language Mixture
日本語の中に英語が単語レベルで混ざることがある。
“ルー語”ね。
「これFrogかなぁ?」「Pretendしてるだけ」「でもRealじゃないでしょ」など。
例に挙げたように名詞・動詞・形容詞によく現れるが、副詞ではあまり見られなかったように思う。
本人は特に気にせず混ぜている様子。
Hの現在いる環境では、Hと日本語で会話をする相手のほとんどは英語が理解できるため、日本語の中に英語が入ることについて、特別な反応をされることがないのだろう。
同様に英語での会話においても、日本語の単語を混ぜたい場面があるのではないかと推測する。
幼稚園には日本人ではないが外国人の子どもが他にも2人いるそうだし、アメリカの初等教育では”Inclusion”を強調して教えるので、仮にLanguage Mixtureが現れていても現場は寛容だろうと思う。
その状況で「言いたいけど日本語でしか言えない」というもどかしさを、Hが経験しているかどうかは不明。
興味深いところ。
②Bilingualismの認識
動物の顔のように見えるおもちゃについて、「これなんだと思う?」という会話をしていたときのこと。
Kさん(Hの母)が「あひる」と答えた後で、Sさんが「ダック」と答えると、Hは「それママが言ったよ」と反応した。
このことからHが同一の対象について、「言語切替により複数のLabel(あひる・ダック)が存在する」と認識していることがわかる。
『バイ(二つの)-リンガル(言語)』とはこういうことだ。
日本で英語を“習っている”状態の子どもは、「これはRed。赤じゃない」「こっちはリンゴ、そっちはApple」というように、Labelが『英語or日本語』になってしまい、『英語and日本語』にならないケースがある。
言うまでもなく『英語or日本語』ではバイリンガルとはいえない。
しかも母語の認識が薄いことは他のさまざまな問題につながる。
私が日本での中途半端な幼児英語教育に反対する理由の一つである。
「ウチの子が英語しゃべった!」なんて喜んでちゃダメだよ。
日本ではまだまだ「日本語はほっといても大丈夫」と信じられていて、あんまり話題になっていないが、年少の学習者に外国語を指導する人は「バイリンガルを育てる」という意味をきちんと考えてほしいと思う。
③コミュニケーション
両親とも日本人で家庭での言語が日本語なので、Hは問題なく日本的コミュニケーションがとれている。
ただし、Hの”YES/NO”は英語式である。
これは特に否定疑問文への反応に現れていた。
たとえば「もういらない?」という問いかけに対し、いらなければ「NO」を示す。
この“非日本式”の返事に対し、母親のKさんがHの意思どおりの反応をしているので(上記の「NO」を「いる」ではなく「いらない」と読み取れる)、これに関しておそらくH本人は日英の差異に気づいていないと思う。
日常的な慣れもあるが、母親のKさんに英語でのコミュニケーション経験がなければ、こうはいかないだろう。
このことからHは日本語話者との対話だけでなく、幼稚園など英語を使用している場面からも、コミュニケーション力を培っていることがわかる。
Hの英語コミュニケーションを観察していないので、明確なことは言えないけど。
“YES/NO”の反応の違いにHが気づくのは、日本へ帰国してからになるだろうな。