“一丸”が少しずつ解けはじめている。
ここからが難しい。
100%の一致団結は長くは続かない。
興奮はやがてさめてくる。
必死につかんだ手から握力が抜けていくように、火事場の馬鹿力が限界を迎えると、ぎゅっとまとまっていたものが、はらはらはらっと剥がれはじめる。
もともとバラバラだったものが、一時的にひとつになっていたのだから、元に戻る過程としてここを通らないわけにはいかない。
しかしここはなかなかの難所。
足元はぬかるみ、強い風と氷の粒が顔に当たる。
耳障りな音が聞こえてくる。
前が詰まっているのに後ろが押してくる。
隣の人が肘で突く。
それでも進まざるを得ない。
そろそろそういう段階に入る。
ここ数日で生まれた「人間っていいな」「日本人でよかった」という気持ちを、忘れずに持ってってね。
途中で落っことさないでね。