予後不良

名馬死亡のニュース(参照)に、ちょっと違和感。

体が大きく足の細い馬は、骨折すると生きていくことができない。
たとえ手術などで治療しても、ストレスや二次的な疾病で、結局、命を落とす。
そのため多くの場合、安楽死の措置がとられる。

というようなことをすごく短く言うと、『骨折が原因で死亡』になるのかもしれない。
うーん。
それでいいんだろうか。
ギリギリ嘘にならないように仕組まれた、巧妙なごまかしのような気がしてならない。

予後不良という用語がある。
平たく言えば、もう治らないこと。
回復する見込みがなく、悪化の可能性が高く、延命が困難なこと。

治る、という選択肢を排除して考えると、はじめて見えてくる最善策がある。
本人や周囲の苦しみや、精神的・経済的な負担を最小限に抑える方法。
本人や周囲の幸せを最大に保つ方法。

馬が骨折して安楽死が実施されるまでの間には、予後不良の判断に基づく周囲の決断がある。
そんな大事なところをすっ飛ばして、『骨折が原因で死亡』でいいのだろうか。

馬は殺されたのだ。
苦しみながら生きながらえて死を待つよりも、早く死なせてやった方が幸せだと、馬のことをよく知る周囲が判断したのだ。
その辛くて重いプロセスを伝えることから逃げてしまっていいのだろうか。

医療が進歩を続けるあまり、人間は死を受け入れるのが下手になった。
死を怖がって生きるほど怖いことはないのに。

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