近頃なぜか、K州時代を思い出させることがよく起きる。
“はじめてのアメリカ”というのは、どうやら楽しいことが多いらしい。
若気の至りとビギナーズラックが、ものすごくうまく機能するのだろう。
初めからアメリカが肌に合わない人は、早めに切り上げた方がいい。
粘ってだんだん合ってくるタイプの国ではないと思う。
以下、完全に私の主観だけど、アメリカという国は、パッと見を魅力的に演出するのが上手なので、第一印象でポイントが高い。
いわゆる惚れているような状態になったら、多少の不便など気にもならず、むしろ暮らしやすく感じる。
母国でルールや規範に敏感な人ほど、恋に落ちやすいかもしれない。
たとえて言うなら、伝統ある良家のお嬢が、「ああ、私はこのまま親の敷いたレールに乗り、いいなずけと結婚して子どもを生んで、自由のないまま死んでいくんだわ」と嘆いているところへ、白馬に乗った王子がさらいに来るようなものだ。
移民の国の王子は百戦錬磨だぜ。
短期留学などだと、この恋愛状態のまま引き裂かれるので、日本に帰ってからも引きずってしまう。
心焦がれ、想い出は美化され、王子のもとへ戻りたくなる。
長くなれば惚れたはれたではいられない。
王子もよく見たらたいしたことないし、自分への扱いも出会った頃とは違う。
所帯じみた面倒がいろいろ起きる。
根を張って生活できるかどうかを試されるのは、そこからだ。
私はどうだろう。
アメリカ暮らしが合っているのは認めざるを得ないが、最初から盛り上がってもいなかったので、8年も経っていまさら恋愛に発展することはない。
オトモダチか仕事仲間ってとこかな。