大なわとびに入れない人って、いるよね。
なにも1回転目で入れとは言わないけど、やっぱり「イチ、ニの、サン」ぐらいで入ってほしいと思うのが人情だろう。
これ、どんなチャンスについても同じことが言えるんじゃないかと思った。
両端で大縄を回してくれている人は、“時代さん”とか“世の中さん”とかかな。
この二人の体力にも限界があるので、仮に100回だけ縄が回るとしよう。
縄が左右に揺れて、上まで上がった瞬間に飛び出すヤツは、すぐに引っかかるリスクが高い。
でももし100回のすべてを跳ぼうと思ったら、そのタイミングで入るより他にはない。
縄を回す役と呼吸を合わせ力強く飛び続けていれば、無謀な挑戦はやがて応援や感動や尊敬を呼ぶかもしれない。
標準的には、数回縄が回る様子を見て入り、そこからできるだけ跳び続ける。
途中で力尽きたり足がもつれたりして、最後までは飛べないかもしれない。
自分の満足のいくところで縄から抜けるという選択肢もあるだろう。
さて。
縄が回り続けているのを見ているばかりで、いつまでたっても縄に入らない人がいる。
最初のうちはうなづくようにしてタイミングを計っているのだが、そのうちどこで入るんだかわからなくなってくる。
縄がこっちに来たときに行くんだよな。
イヤ、それでは引っかかりそうだ。
上に行ったら入りやすいかな。
あ、あぁ、下になっちゃった。
前の人はどうしてたんだっけ。
早くしなくちゃ。
みんな見てるし。
次、次こそ行きます。
あ、あぁ。
頭が混乱してきて、縄が二重にも三重にも見えてくる。
ますます入れない。
限定100の回転数は容赦なく減っていく。
跳ぶ人不在で縄を回すことほど空虚なものはない。
見物客は愛想をつかして去っていく。
回す方もイヤになってくる。
「もう腕が疲れたよ」と、100回を待たずに縄は止まってしまうかもしれない。
チャンスは誰の前にも巡ってくる。
そんなことはみんな知っている。