成績

大人になっても大学院生でも、成績を気にする学生って多いんだな。

学歴の余剰部分を自らの意志で受けに来ているのなら、重要なのは学んだことが身になっているかどうかだけで、成績なんてどっちでもいいじゃん、と思うのだが、そんな学生はどうやら少ないようだ。

皮肉なことに、「どっちでもいいじゃん」な学生ほど理解力が高く、結果として成績もよい。
「良い成績がほしい」学生に限って、肝心の学習到達度はイマイチで、希望どおりの成績が取れない。

で、クレームとなる。

学生同士の横のつながりなら「小っちぇえなぁ」と思って終わりだけど、担当講師である以上、そういうわけにもいかない。
お客様センターで磨いたスキルを活かし、誠心誠意、対応させていただく。

情けと公平さのバランスとか、ややこしいことはいろいろある。
精一杯やっているのを知りながら、厳しい結果を言い渡さなければならないこともある。
目の前で凹まれるのは本当に辛い。
自分の中で消化しきれず、つい怒りを外へぶつけてしまう人もいる。
落ち込ませておいてケアも用意するというのはおかしな役目だ。

成績を甘くつける風潮にも納得できるようになった。
最大のメリットは、学生も講師も労力を最小限に抑えられることだろう。
悪い成績はつける方だって気分が悪い。
“良い記録”を求める学生にしてみれば、「減るもんじゃなし、黙ってAをくれりゃいいじゃん」ってなもんだ。
教育ということさえ考えないようにすれば、ハッピーエンドに逃げるのが最善策なのだろう。

さて。
講師というものは、ある程度の時間、教室内外での学生の様子を見ていれば、試験などあからさまなことをやらなくても、誰がどのくらいのものかだいたいわかってしまう。
実際、中間テストで番狂わせを演じたのは1人ぐらいで、ほぼ全員が順当な点数を取った。
ついでに言うと、クレームをつけてきそうな学生も予測できている。

学生の方は「ちゃんと読んだのかよ!」と思っているかもしれないが、こちらは全員の解答を暗記してしまうくらい、タテ・ヨコ・ナナメに何度も読み返している。
問題をきちんと把握していなかったり、指示に従わずに解答していたりでは、正直、助けようがないよ。

私がなによりがっかりしたのは、すぐバレるような嘘までついて成績を上げようする学生がいること。
いちおうその場では騙されておくが、どうしようもなく悲しい気持ちになる。

と、ここまでを中間テスト返却の直後に書いた。
で、期末テストの採点に取りかかる前に読み返してみた。

「減るもんじゃなし、黙ってAをくれりゃいいじゃん」。
そうだよ、減るもんじゃない。
私だってできることなら全員にAをあげたい。
お願いしてでも取りに来てもらいたい。
試験中も「頼むからがんばって」と祈るような気持ちだった。
あなたが頑張ってさえくれれば、私もあなたもハッピーになれる。

祈りは通じたかしら。
ドキドキするなぁ。

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