ずっと遠ざかっていた羊羹を久しぶりに味わった。
そもそもはイザという時の手土産用に、日本グッズとして持ってきたものだった。
賞味期限の関係と、胃腸にやさしいほうじ茶との相性と、上質の糖分で疲れを和らげようという目的で封を開けた。
いまでこそ甘いものが要らない体質だが、幼稚園生ぐらいの頃は羊羹が大好物だった。
生意気なことに他の和菓子屋にはダメを出し、このブランド羊羹だけをパクパク食べていたので、親戚の中でちょっと有名だった。
それで調子に乗って食べ過ぎたからか、ある時期から一切受け付けなくなってしまった。
なのでお遣い物に買うことはあったけれど、自分で食べるのはたぶん数十年ぶりだと思う。
まず名前の素晴らしさにしばし感じ入る。
“空の旅”でこの紅色が夕焼けだと知る。
深い黒は“夜の梅”。
洗練されたお菓子の雅に、成熟した美しい日本語がぴったりマッチしている。
アートだなぁ。
そして今日は“おもかげ”をいただく。
長い間すっかり忘れていたが、確かに味わったことがある。
口の中に広がる黒砂糖の香りで、おばあちゃんとデパートに行っては、小さな紙箱に入ったスティック状の羊羹を買ってもらった記憶が蘇った。
よぉでけた話やろ?