なぜか立て続けに、留学に興味のある人に出会った。
空港からの帰り道。
タクシーにスーツケースを積んだので、陽気な運転手さんに「外国行ってきたの?」と聞かれた。
ええ、まぁ。
「留学かなんか?」
ええ、まぁ。
そこから運転手さんのアドバイスが始まった。
英語を忘れないように外人バーに行けとか、英語はニュージーランドに限るとか、おもしろ情報満載だった。
カラオケでプレスリーを歌いたいから、発音を良くしたいそうだ。
テレビの下見のため家電屋に行った。
“研修中”の名札をつけた初々しい店員さん。
あれこれ質問しているうちに、「そんなことまで話しちゃっていいの?」的な他社の裏話まで聞かせてくれた。
光回線への切り替えから、インターネット接続の話になり、利用中のプロバイダがマイナーなため、アメリカの会社だと説明した。
「僕、アメリカに留学してみたいんですよ」と唐突に言われ、テレビのことを詳しく教えてもらったお返しに留学のことをちらっと話すと、あからさまに食いつかれてしまった。
英語が話せるようになりたいと言うので、隣の売り場に良い電子辞書ありますよーと勧めておいた。
学期中伸びに伸びた髪を切りに行った。
担当になったのは個性的な雰囲気のにーちゃん。
独自の世界がある様子でお愛想は言わないし、しゃべる時も小声でボソボソ。
無口な美容師さんは嫌いじゃないので、今日は静かにいけそうだな、と思っていた。
「半年に1度ペースでしか美容院に行けないので」と言ったところからアメリカ暮らしに話が移り、質問されるままに軽く答えていたら、「アメリカでクルマ乗ってんすか?」を皮切りに、彼のハートに火がついた。
テンションが急上昇して、中古車の売買とか車両登録とか、珍しいところを集中的につっこんできた。
美容の留学でイギリスに行って以来、外国で車を所有するのが夢だそうだ。
こっちは帰りたくて帰りたくて、やっと日本にたどりついたというのにねぇ。