モンスター

お役所仕事と、モンスター一族について。

911(警察&消防)にかかってきた電話の通話記録を分析し、緊急事態に用件が伝わらない原因をなんやかんや考える、という論文を読んだ。

背骨になっているアイディアは、相手に対する双方の期待(Frame)にズレがあるんじゃないか、ということ。
電話をしてきた一般市民は“カスタマーサービス”にかけたようなつもりで、受けた方の警察職員は“公共事業”のつもりで話すから、お互いイライラすることが起きる。

この論文は10年ほど前に書かれたものだけど、そういえばこういう“お役所仕事”ってなくなる傾向にあるよなぁ、と思った。
論文の中にもちらっと出てくるが、教育も含め、あらゆる業務が“カスタマーサービス化”してきている。

この動き自体はアメリカも日本も同じだが、もともとある”売買vs買売”の上下関係に違いがあるので、結果も違ってくる。

以前にも書いたが、どうやらアメリカのCustomerが要求できるServiceはかなり限られている。
Customerは神様でもなんでもない。
民間のServiceであっても組織によっては、日本のひと昔前の“お役所仕事”に近いものが結構ある。
本物の“お役所”にいたっては、日本のお役所より堂々と権威を振りかざしていると思う。

世界でいちばんウルサイ客を抱える
お客様王国・ニッポン
普段の慎ましさはどこへやら。
日本人が客になったときの性質の悪さは、歴史に名を残す独裁者にも勝ると思っていたが、昨今はいよいよ“モンスター”という名前までもらって、地位を確立してしまった。

お客を大事にする姿勢に罪はない。
日本に帰るとその良さが再確認できて感動する。
問題は“お上”が日本からいなくなってしまったこと。
お役所や学校が“お上”の立場を放棄して、市民をお客に変えてしまった。
それに連動する形で、お客からお客様へ、お客様からお客様様へと、インフレに歯止めがかからなくなり、いまやモンスターという際限なくつけあがった客を育て上げてしまった。

モンスターになるかならないかは、お客側個人のモラル任せだから、ある割合で困ったちゃんが発生するのも無理はない。
“お役所仕事”を一部復活させたらいいのにと思うけど、現実的ではないんだろうなぁ。

“売ってくれてありがとう”と、“買ってくれてありがとう”は表裏一体。
お互いさまの気持ちはどうしたら育つんだろう。

参考文献
Tracy, K. (1997). Interactional trouble in emergency service requests: A problem of frames. Research on Language and Social Interaction, 30(4), 315-343.

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