ある親子の会話。
簡素+意訳バージョン。
[登場人物]
父、母、長男D(8才)、長女J(5才)、次男E(3才)、三男(1才)
[背景]
母の友達Sが立ち寄った。
母はSに写真のネガを渡すことになっており、「パパに『ネガちょうだい』って言ってきて」と娘Jに頼んだ。
Jは仕事中の父のところへ行ったが、手ぶらで戻ってきたため、母はSにネガを渡すことができなかった。
会話はその日の夕食中のもの。
研究の目的のためビデオ撮影が許可されていた。
母:ねぇ、ネガないの?
父:あるよ。キャビネットの中
母:じゃあJにそう言ってよね。そのために行かせたんだから
父:ごめん。Jには「いま手が離せない」って言ったんだ
Jが「Sにあげるネガちょうだい」って言ったから
母:キャビネットにあるの?全部?
父:うん
母:Sが来てるのわからなかった?
父:知らないよ。なに、文句言いたいの?
母:分けて入れてある?
父:分けてあるよ
父:全部そこに入ってる。どのネガに何が写ってるか見ないと…
【Eの泣き声がして中断】
父:見たければどうぞ。Sに渡すなりなんなり
母:そうね、やらないと。だって今日渡せなかったんだから
父:悪かったよ。言われたことに対してちゃんと答えたつもりだったけど
まさか場所を聞いてるとは思わなかった
「ママにネガがどこにあるか伝えて」とでも言ってくれれば
母:そりゃJが8才9才なら言えたでしょうよ
父:で、君は8才9才でもないよね?
【間0.2秒】
母:ええ。確かに私は「ちょうだいって言ってきて」って言ったわよ
【間0.4秒】
父:うん
母:どこにあるかわかればSに渡せると思って…
父:なるほどね。でもJはそういうふうには言わなかった
母:だけどSが来てるってわからなかった?
父:わからないよ。誰が来てるかも何が起きてるかも知らないよ
母:でも
父:配管やってたんだよ?
【間0.6秒】
父:俺が悪いって証明するのがそんなにどうしても重要か?
【間0.6秒】
父:そんなに
母:別にどうしても重要じゃないわよ
父:どうも重要そうだな
【間0.8秒】
D: パパ、ビデオ回ってるよ
【中断】
J: ママ、あれってビデオ?写真?おしゃべり入る?
母:(うなづく)
D: ビデオだよ。マイクあるだろ
J: じゃ、じゃあ、聞こえちゃったじゃん (ヒソヒソ声で) ケ・ン・カ
父:ケンカだと思ったの?
【間0.2秒】
J: (うなづいて) ううん
母:(笑)
【間2.4秒】
父:ビデオ隠した方がいいと思う?
【間0.6秒】
J: (持っていたトウモロコシでカメラに向かって目を隠してみせる)
うん
母:なんで?
【間0.4秒】(Jは父の方を向いて口を拭いてもらう)
J: だって
母:だって?
父:余計なことだから?
J: (うなづいて) うん。だから
【間0.6秒】
父:まあ確かにね
【間0.4秒】(Jは父を見ている)
父:でもね、あの人たちはうちがどんなふうか見たいんだって
だからいいんだよ
[夕食後、研究者と子どもたちの会話]
J: ねぇ、パパとママのお話いつ聞くの?
【間0.4秒】
研:あとでだよ
D: ケ、あの、仲悪く話したんだよ
J: (Dを見る)
研:そうなの?
D: うん
【間0.4秒】
J: だっていつもどおりだから
そうなの
【出典】
Taylor, C. E. (1995). “You think it was a fight?”:Co-constructing (the struggle for) meaning, face, and
family in everyday narrative activity. Research on Language and Social Interaction, 28(3), 283-317.