自慢について考え中。
事実の報告が自慢になるためにはいくつか条件がある。
まず“聞き手”を用意する。
“独り言で自慢”もできるのかもしれないけど、イッセー尾形とか竹中直人級の芸になってしまう気がする。
“聞き手”は適切に選択されなければならない。
説明をわかりやすくする目的のためだけに、ここでは財力を例にとる。
大金持ち・小金持ち・貧乏人がいて、小金持ちが「俺、カネ持ってんだよ」と自慢するなら、聞き手に選ぶのは通常、貧乏人である。
自分より多くお金を持っている大金持ちを相手に自慢するのはリスクが高い。
つまり小金持ちは自慢を始める前に、大金持ちの状況も貧乏人の状況も、ある程度把握しておかなければならない。
だからよく知らない人や不特定多数を相手に自慢をするのはかなり難しい。
また、自慢を効果的にするために、小金持ちは聞き手(=貧乏人)がうらやましがりそうなポイントを知っておくとよい。
天真爛漫な生まれつきの大金持ちが、「電車に乗った」とか「コンビニに行った」とか、世の中的にはフツーなことをウキウキ話してくれても自慢にならないのはポイントがずれているからだ。
さらに、自慢をする人には、“自分は昇りつめた”という自覚がなければならない。
出身が大金持ちの人が所持金を減らして小金持ちになった場合、「俺、カネ持ってんだよ」という自慢はしにくい。
「あの頃はカネがあった」と過去の栄光を材料にする場合も、その当時のうちに“昇った感”を獲得しておかないと、後々振り返った時にただの“思い出”になってしまい、自慢しそこなう。
最後に自慢は流暢に披露されなければならない。
話し方がたどたどしかったり、内容がよく理解されないようでは、自慢としては大失敗。
繰り返すがカネは単なる例であって、地位でも頭脳でも美貌でも武勇伝でも、逆に不幸話でも自慢の種になりうる。
そう考えると自慢というのは、綿密に計画され高度なテクを要する素晴らしい話術だ。
「すごいですねー」と感心せずにはいられない。
聞き手が途中で遮ったり自慢返しをしたりすると、場の空気が悪くなる。
聞き手が終始無言でいても自慢そのものは成立するが、反応がよくないと往々にして話し手は自慢を繰り返す。
手短に終わらせたければ、適度に相槌を入れた方がよい。