私の部屋の前には大きな木がある。

日本では山とか森に行かないと、こんなに太くて背の高い木々にお目にかかれない。
芝生の黄緑の向こうに黒い幹がどっしり構え、濃い緑色をしたたっぷりの葉が、今朝は雨に濡れて重たそうに見える。

ふと、この葉っぱたちが生まれる前から私はここに住んでいるんだな、と思った。

雪が解けて日差しが強くなってきた頃、部屋がまぶしくてかなわないことがあった。
この木が丸坊主だったせいで、日光が枝をすり抜けて突き刺さってきたのだった。

それからやわらかそうな若葉がぶわっと勢いよく、そして鮮やかに揃った。
芝生と同じような黄緑色をしていた。

夏を越え、今や深い色をした硬い葉がところどころオレンジがかってきている。
やがて全体がきれいに色づいたかと思うと、まもなく風に揺られて、てっぺんから順にばっさばっさ降ってくる。
足元でカサカサいわせたり、メンテナンスのおじさんが“吹き飛ばし機”をかつぐ姿を眺めたりするのが楽しい季節。

そうして木は生きているのだなぁ。
去年と同じように見えても、実は毎年違う葉っぱをたずさえて確実に成長してきたからこそ、ここまで大きくなったのだ。

リスが群れになって一斉に駆け上ったり、鳥が止まったりもするけれど、基本的には自分に必要なことをきっちりやっておけば大丈夫ってことかなぁ。

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