ニッポンの世の中は、今日から本格始動。
父は冬休みの宿題を持って出勤して行った。
すっかり頻繁になった同窓会のメンバーのうち、現役で働いているのは父ぐらいらしい。
父宛に届く年賀状も、のんびりした隠居生活を伝えるものが多くなった。
実際ここ数年、本人的にも家族的にもいつでも辞めていい状態だったが、いろいろな事情で会社に残らされていた。
私が帰国した先月中旬には、「とうとう来年は引退できそうだ」と、ほっとしたような、寂しいような報告をしてくれた。
取り立てて趣味もない父が、第二の人生をどう設計するのか、またそれに伴って母の生活も一変するであろうことが少し心配ではあったが、ストレスの多い立場から退けるのは喜ばしいことだった。
ところが年末のある日、「慰留された」と困惑気味に帰ってきた。
更新すれば次の引退チャンスは4年後。
年明けに返事をすることになった。
“冬休みの宿題”。
それから2週間ほど、会社のこと、部下のこと、母のことなど、静かに検討を重ねていたのだと思う。
条件付きで続投を飲むことに決めたようだ。
社会はオトナの責任感でできている。
そのうえ、何かとややこしい会社組織にあって、長く同じところに勤めるのは並大抵のことではない。
学問より労働を崇拝する私の偏見は、父の姿が大いに影響している。