音声学のB教授は、すごい勢いでしゃべる。
大柄でオーバーアクション。
教室の端から端までフルに使い、動き回りながら息もつかずに話し続ける。
「さて、これから母音について説明するよ。先に言っておくぞ、母音は簡単に思えるかもしれない。そのとおり、母音はいかにも単純だ。
そこで君たちは“オウ、音声学なんて簡単じゃん”と思うかもしれない。しかーし、ちょっと待て。先に言っておくけどそれは母音だからなんだ。まず最初に簡単な方から入るからなんだ。すぐにもっと複雑な、つまり子音のことだけども、複雑なところに入っていくからな。でも今日はまず母音から始めよう。どうやって始めるかって?それを今から説明するよ」
…というようなことを一気にダダダダーっとしゃべる。
意識的に止めないと止まらないらしく、「よし、じゃあちょっとここで止めよう。質問を聞かなくちゃな。コメント、質問、提案どんなことでも。はい、ふんふん。あーいい質問だ」というのがところどころに入るが、あとはもうひたすらしゃべる。
専門はアフリカの言語で、不思議な音がいろいろ出せる。
講義の構成はよく練りこまれており説明がわかりやすい。
授業前の数分は“本番前”って感じで、メモを手に段取りを頭の中で走らせている緊張感がある。
で、いったん授業が始まったらそれが一挙に溢れ出す。
プロフェッショナルだ。
私が日本語教育でかじった程度の音声学は、たった2週間であっさりカバーされてしまった。
ここから先は未知の世界。
B教授の怒涛の勢いに必死でついていかなくては。
<追記
「早口すぎる」とクレームがあったらしく今日の授業はいつもよりトーンダウン。
B教授もやりにくそうだったし何だかさみしい感じでした。アメリカ人に教えるって大変。