ショックセラピー

授業の途中で教授が、「ちょっと用事があるので」と席を外した。

「その間この人に代わってもらうから」。
女子学生と入れ替わりに、教授は出て行ってしまった。

と、いきなり、「#$&≠%§∂∫≡¶‰£∞!!」。
…?????
最初スペイン語に聞こえたが、クラスメートの西語教師陣も、ぽっか~んとしている。

「*¶#∩〆@∫×%∂≡?」
「‰仝¥≠√∂‡§#∞$∫£!」
すごい勢いでたたみかけてくる。

面食らったのが少しほぐれてくると、ジェスチャーから、「どうやら“私・あなた”みたいなことを言ってるぞ」ということがわかってくる。

それをとっかかりに、「“女の人”ってことか?」「“背が高い”じゃない?」と予想がつくようになる。
主語によって活用語尾のようなものが決まることも、言語教師の集まりだからなんとなくわかる。
でも英語を話すと「ダメダメ!」と注意されるので、相談ができない。

繰り返し出てくる、“あらまどぅん”=「わかった?」だとわかって、みんなうなづくようになる。

指された。
質問がわからない。
「早く早く」的なジェスチャーで急かされ、仕方ないので“私は背が高い”をおずおずと発音。
「そっちの人、聞こえた?」みたいなことを言われたので、声を大きくして、続いて“あなたは背が高い”と言ったら当たりだったようで、ほっとした。

30分ほどが過ぎ、出て行ったはずの教授が教室の隅から登場。

この授業は“バイリンガル教育”(Perspectives in Bilingualism and Bilingual Education)。
様々な事情でアメリカに来た外国人が、生まれて初めて英語の環境に放り投げられた感覚を、ショックセラピーで体験させられたというわけだ。
セラピー後のディスカッションでは、「怖かった」「緊張した」「圧迫感があった」「ストレスを感じた」「イライラした」「集中して聞き続けるので疲れた」(ちなみにそれは留学生には日常だけどねー)など感想を話し合った。
たった30分でこれだから、1日中、ひょっとしたら一生続くのかと思うと、その重圧に気が遠くなりそう。

「わかってきたら楽しくなった」というのも本当だ。
日本で教えるような外国語教育は所詮+αだけど、ここでの英語教育はマイナスから始まるだけに、プラスに変わった時の喜びは大きい。

政治や思想の移り変わりと、それに翻弄され続けるバイリンガル教育について学び、学期末には“推進派”と“反対派”に分けられて、討論することになっている。

「ショックセラピー」への4件のフィードバック

  1. 面白いですね。結局何語だったんですか?(もしかして存在しない言語とか?!)

  2. >ki
    そう!私も「これ架空の言語だったらすごいなぁ」と思ったけど
    ちゃんと存在してました。答えはトルコ語。

  3. 30分で、ふたつ(みっつ?)も表現できるようになったなんて、すごいじゃん!それに、記号文字の使いっぷりも。
    そういえば、私の大学のときのフラ語の先生も、いきなりフラ語だけしゃべってて、みんな、ぽっかーんとしてたなぁ。彼女が日本語をしゃべったのは3学期で、なんかほっとした記憶が。

  4. >acha
    ↑では省きましたが実は「私・あなた・あの人(?)」の主語3パターンと
    「女(名詞)・背が高い/低い(形容詞)・とても(副詞)」を学習しました。
    が、やっぱり直接法は外国語教育には非効率だと思うよ。

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