すっかり忘れていたことが、めきめきと蘇ることがある。
年齢とともに記憶力が低下しているのをひしひしと感じる。
「昔はこうじゃなかった」という弁解もせつない。
お店や人の名前、何年前の出来事か、よく知っているはずの電話番号などなど、思い出そうと努力さえしない。
それなのに、何かを失うと途端に立ち上がる記憶がある。
それも正確な時系列で、どこで何を買ってその後どこへ行ったか、相手の表情や声のトーンという細かい部分まで、鮮明に思い出される。
そんなところまで見ていたのかと、当時の自分の観察に驚くほどだ。
不思議なのは時々そこに、私自身も組み込まれて登場すること。
自分の行動も、カメラに収められているのだ。
夢を見ている感覚に近いだろうか。
あえてひとつひとつを丁寧に追ってみたら、じゅくじゅく痛んできたので、やめた。