インターホンの時点でRと私は、「シティに来て日本語しゃべってるよ」と笑っていた。
「そうだよ、日本語の通じるホテルだからね」と言っていたが、それは間違いだった。
チェックインの間Rをひとりにしておいたら、「…英語が通じないよ」と言ってきた。
なるほど。
“靴を脱ぐ”に始まるすべての注意書きも日本語だった。
「“なんでここにガイジンが??”って、びっくりされちゃった」と言って笑った。
普通のアパートの2部屋(5A+5B)が客室になっている。
当然キッチンとバスルームは共同。
私の“部屋”は5Bにあるので、5Aでチェックインなどを済ませお隣へ移動。
ドアを開けるとすぐ2段ベッドがふたつ。
$3奮発したため私は奥の個室(?)へ。
小さいカウチと窓がある。
思ったよりきれいでよかった。
今日の同居人たちは、1ヶ月のダンス留学に来たばかりの女子3人と、東海岸ひとり旅で明日ボストンへ向かう女子1人。
パワーが溢れ出してる感じだった。
5Aには喫煙所としてテラスがあり、夜景がきれいだと聞いていたので行ってみた。
2階に上がると、カーテンが引かれたスペースがふたつ。
寝台列車のようになっている。
外に出ようとしたら“夜11時まで”の貼り紙が。
すでに1時間ほど過ぎていたので、仕方なく窓越しに写真を撮っていた。
するとカーテンから男子が顔を出して、何かささやいている。
聞くと「出ちゃってください。規則は破るためにあります」。
というわけでお言葉に甘えて、さくっと写真を撮ることができた。
お礼を言ってとっとと戻ろうとしたが、カーテンの中に招かれて立ち話。
放浪の旅+ダンス留学の2人組、ボストンの女子と、ひそひそ声でおしゃべり。
“部屋”に戻り早めに就寝。
こっちに来てからずっとダブルベッドのせいか、寝返りのたびに壁に当たり、目が覚めてしまった。
5Aから足音やインターホンの音が聞こえる。
ま、タイムズスクエアのすぐ近くで、宿泊代が$100以上浮いたので、文句はない。
朝。
角のデリでサンドイッチを買ってきて、5Aのリビングで食べていたら、昨夜の2人組と一緒になった。
セントラルパークへの行き方を聞いたら、親切に教えてくれたうえ“歩き方”を取って来てくれた。
5Aでは夜中に“事件”があり、みんな寝不足だという話を聞く。
あのインターホンや足音はそれだった。
旅先ではいろんな人と出会う。
良くも悪くも濃い経験をする。
「海外でいちばん難しいのは、日本人どうしのつきあいだと思う」と言ったら、とても深く聞き入ってくれた。
お花見スポットを教えてもらい、お別れの握手。
こういう気持ちのよい若者と会うから、私は年を重ねるのが好きなんだなぁ。
ボストンへ向かう女子と駅まで一緒に歩く。
自分の背より大きい荷物をしょっている。
たくましい。
私は旅人でもないのに、なんだかエネルギーをいっぱい注入してもらった。
(またつづきます)