トースト

うちのアパートのトースターは両面焼きなんだけど、上面の方が2倍ぐらい強い。

朝はいつもベーグルなので、切った面を上にして焼けば問題なし。
食パンは片面だけがウェルダンになってしまう。
サンドイッチにする時は外側がカリッとしていいけどね。

夕食を食べていたらRがやってきた。
食パンをトースターに入れていたので、「使ったばかりだから短めにした方がいいよ」と言った。

Rは“第二言語(L2)”のクラスメートでもあるので、来週に控えた中間テストの話になる。

まもなく“チン”という音がしたが、まだパンは真っ白。
「短すぎた~」と言ってRがダイヤルを回す。

留学生たちが口々に「英語が上達しない」と言う話に関連して、上級L2学習者が否定的要因ばかり集めてしまう傾向について話す。

以下は私の論理。
初心者は“できた”という要因を集めて意欲を高めるが、上級者は“できない”を集めがち。
これは、能力(Competence)と運用(Performance)の力関係で、能力が低いうちはほぼフルに運用につなげられるのに対し、上級者ではその率がどんどん下がっていくから。

運用力は場面にも左右される。
たとえば外国人同士で話す場面(Lingua Franca)に比べ、ネイティブがひとりでもいる場面では、”Authority”としてのネイティブの存在が
学習者の心理に影響(緊張感など)を与えるために、運用力が落ちる。

リラックスした状態のLFでは運用力が高まるので、もともと能力の高い上級者は満足感を得やすいが、その印象と比較することが、対ネイティブではマイナスに作用する。
これを繰り返していると、LFの運用力と対ネイティブの運用力がどんどん乖離してしまう。

つまり、たとえL2を使用していてもそれがLFだと、かえって習得の妨げになるのではないか。
この会話の”Authority”であるRも納得してくれた。

“チン”

忘れてた!

Rのトーストは焦げてしまった。
「あ~あ」と言ってトースターから出し、「焦げには違いないけど気分的に」と言って裏返してバターを塗った。

それだよ!それ!
みんなそれをすればいいんだよ!
Rは大きな目をさらに大きくしてうなづいた。

勉強でも仕事でも生活でも何でも、少しでも焦げてない面を上に向けた方が、おいしく食べられるんじゃないかな。

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