ドアに貼ってあった日本のポストカードが1枚なくなった。
サルサパーティーの時に、”Japan”なポストカードを貼っておいた。
ゲストたちは思惑通り、“富士山”や“新幹線”や“日本円”に興味を示してくれた。
広報目的もあるが、隣のLが物静かな人なので、ゲストが部屋を間違えたりという迷惑を未然防止するためでもあった。
パーティーの後も特に外す理由がないので、そのまま貼ってあった。
一昨日の夜、Lの部屋が珍しくにぎやかだった。
友達か彼氏が来ているのだろう。
私は自分の部屋で勉強していた。
何時間かして、ドアの外側で男性の話し声と、何かを剥がす音がした。
それに反応して飛び出していくのも感じ悪いので、そのままにしていた。
まもなく男性は帰っていった。
休憩をしにキッチンに出て、なんとなくドアを振り返ると、明らかにポストカードのバランスが悪い。
“sushi”のカードがなくなっている。
赤の他人なら怒鳴りこめるが、お隣同士のおつきあい。
微妙なところだ。
ちょっと考える。
Lの部屋のドアをノックし、「気を悪くしないでほしいんだけど」と前置きして、ついさっき話し声とともにぴりぴりっと聞こえたことと、カードがなくなっていること、彼氏がなんか言ってなかったか尋ねた。
Lは驚いて「明日さっそく聞いてみる」と言ってくれた。
彼はとても酔っ払っていたらしい。
「それから彼氏じゃなくて友達だから」とも。
これはどちらかというと朗報。
それから2日。
Lと会ってもカードの話は出なかった。
「聞いてみる」と言ってくれた以上、信頼を示すためにもこちらも持ち出さない。
夜ノックする音がして、ドアを開けるとLがポストカードを持って立っていた。
「酔っ払いは本当にイヤだわ」と言って、ふたりで笑った。
カードには付箋メモがついていて、”Sorry, I’m a loser.”と書いてあった。