英語ができるというと「通訳や翻訳はやらないの?」と聞かれることがある。
友人には私など足元にも及ばないほど有能で、講師業と通訳・翻訳をこなしている人がいる。
努力家であるのは言うまでもないが、才能がなければ絶対に両立できない。
また、彼女たちは往々にして、講師としての能力も相当に高い。
私には通訳・翻訳の能力を測ることはできないが、おそらく相乗効果というのか、一方の経験が他方によい影響を与えていそうな気がする。
私はバイト程度に何度か通訳をしたことがある。
で、これは無理だなと思った。
通訳・翻訳の勉強量は莫大。
英語ができるとかのレベルではまったく歯が立たない。
とはいえもし通訳や翻訳がやりたいなら、やってやれないことはないだろうとも思う。
大変だけれど、可能にしている人は確かにいる。
無理だと思うのは、それと講師の2足のワラジを履くということだ。
通訳・翻訳業は、間に入って便利な道具に徹しなければならない。
車の運転に例えるならタクシー運転手。
目的地まで速く安全にお客を送り届けるため、地図やカーナビや車そのものを使いこなす。
お客の側としては、いちいち料金を払わなければならないが、手っ取り早いし間違いがない。
講師業は教育係なので、学習者がひとり立ちできるための手助けをしていく。
こちらは教習所の先生。
免許をとって卒業させるのがゴールだ。
生徒は初期投資が必要だが、ほぼ一生モノの技術が身につく。
しかし自分で磨き続けなければ、運転の腕は落ちるし事故を招く危険性もある。
同じく“車”を介したプロだけれど、仕事の意義も、発揮する能力の方向性もまるで違う。
にもかかわらず掛け持ちできる人がいる。
これはすごいことだ。
ちなみに私がやっていた、会社員と講師業の掛け持ちは、教習所の先生がマイカーに乗るようなもので、ワラジとしては1足なのである。