ウにテンテン

「ヴ」。
このブログの「いまさら」シリーズの中でも、ひときわいまさら感が強いけど、いまさら書いてみる。

「ヴ」という字を使うか使わないかは、もう、ひとえに好みの違いだろうと思う。
ある人は「カッコいい」と思って使い、またある人は「原音に近い」と断言して使い、またまたある人は「気持ち悪い」と言って使わない。
このあたりは、わりと言語に対する興味や考え方が近い人でも意見が一致しない。
ちなみに私は、気持ち悪いから使わない。
とはいえ、使っている人をどうこうしようとも思わないけどさ。

たとえば「カッコいい」が「ヴ」の採用理由だとすると、やっぱり「ヴァレンタイン」のチョコレートは、「バレンタイン」のより高級だったりするのかしら。
「ドライヴァー」は「ドライバー」や「運転手」の乗らない車に乗ってるのかしら。
「ビリーヴ」のときは、「ビリーブ」よりシュッとした内容を思い描いているのかしら。
「アイラヴユー」または「アイラヴュー」と「アイラビュー」とでは、その後の展開が変わってくるのかしら。
「ヴサイク」は「ブサイク」よりイケてるのかしら。

そして「原音」系の主張は、これに限らず全体的に説得力がないと思う。
そんなこと言いだしたら、いま一般に通用している主にカタカナの表記はぐちゃぐちゃになるし、中国語はどうすんのって話になっちゃうぜ。

それはともかく、私は気持ち悪いから使わない。
あ、さっきも言ったっけ。

そういえばどこから「ウ」が出てきたのかと思ってウィキペディア(参照)をさっと見て、載っていないから他を探しに行って、これといった答えが見つからず、「『ウ』と『ヴ』の口の形が似てる」という知恵袋的回答に「それはないわ」と思ってもう一度ウィキペディアに戻って、「ワ行の濁音」の部分を読み飛ばしていたことに気づいた。
なるほど、「ワ゛、ヰ゛、ウ゛、ヱ゛、ヲ゛」か。
/v/と/w/ならわかる。
さすが、諭吉。

となると、仮名遣いが変わったときに「ウ」が生き残ったというのは、ある種不幸だったね。
旧仮名遣いをつくった頃の日本人でも、ア行とワ行の「ウ」の音を区別してなかったんだろうか。
ウィキぺディア(参照)は/kw/に絡めて「クヮ・クヰ・クヱ」にまでは触れるけど、「ウ」はスルー。
もしワ行の「ウ」が他の段と同じく別の文字だったら、その字は/v/のために濁音で残って、ひょっとしたら後々、清音を/f/に使えたかも。
仮名遣い転換期にその字が統合対象だったら、ワ行はウァ行になって「ウァ、ウィ、ウゥ、ウェ、ウォ」だったかも。
当時、「ワ」と「ヲ」にはもう外せない勢力があって、「ウ」はア行と同じ音で発音されていて、5個中3個現役だからワ行は残って、ワ゛行のことは議論に上らなかったのかな。
現代仮名遣いの仕事を任された“有識者”に、欧米語が話せる人はどれくらいいたんだろう。

は。
今これを書きながら気づいたけど、私にとっての「ヴ」は「ヰ、ヱ」と感覚的にかなり近い。
パッと読めるほどの馴染みがなく、たとえばアラビア文字の読みを習っていた頃と同じように、「ん?これは…、ワ行…の、えーと、イ段だから…」という感じで、解読に少し手間がかかる。
「ウ」はア行の「う」と読めちゃうから、いったん「うぁれんたいん」となって、それじゃあ意味がわからないから読み直して、「あ、テンテンか」となって、「てことは/v/の音だから、valentineだな」とアタリをつけてカタカナに戻る。
幸い「ヴ」の登場する語は欧米由来のものばかりなので、英語を通ることで解読が速くなるが、ひと手間には違いない。
私は普段、意識的に複数言語を同時に起動させないようにしているので、日本語モードで読んでいる中で「ヴ」に出会うと、まず反射的に「う」が先に立ってしまい、それをいちいち/v/に修正しているのだ。

で、だよ。
そこまでしてやっと/v/にたどり着いたのに、読み上げるとなったらまた「ば・び・ぶ・べ・ぼ」に変換するんだよ。
なんのこっちゃ。
じゃあ最初っから「バ行」で表記すりゃいいじゃないの。
それが日本語の原音なんだし。
ぶー。

ま、なにはともあれ、私は気持ち悪いから使わない。
あ、また言っちゃった。

「ウにテンテン」への2件のフィードバック

  1. まさに ウ にてんてんの 「知のヴァーリトゥード」 なんてサイトをやってまして、恐縮です。

    原則としては、外来語として馴染んでしまっている言葉は当たり前に 「バビブベボ」 を使い、一般的にはあまり耳に馴染んでいないかもしれないカタカナ語で異化効果 (一種の「気持ち悪さ」かもしれませんね) を狙ったりする時には、酔狂で ウ にてんてんを使ったりしてます。

    1. あぁ、ブログのタイトル、確かにそうでしたね。本文にも書いていますが、あくまでも好みの違いですので、恐縮なさる必要はありません。私は音を重視するタイプなので、今のところ「バビブベボ」を「ヴ」に置き換える機会がないだけです。いずれ日本語の中で/v/の音が普及したら、自然に受け入れられるようになると思います。

      いただいたコメントから考えてみましたが、世の中の動きはむしろ逆で、すでに「バビブベボ」で馴染んでいるものに目新しさを加えるべく「ヴ」が採用されているんじゃないでしょうか。そのあたりの、なんというか不誠実な感じも、気持ち悪く感じる理由なのかもしれません。

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